ロシアのウクライナ侵攻ですっかり有名になった「フィンランド化」という言葉。冷戦時代のフィンランドはソ連を刺激しないよう顔色をうかがいながら、独立した民主主義国家として自由主義経済を貫くことです。どっちつかずのコウモリのようだと揶揄するニュアンスもあったのですが、賢明な選択だったと評価されています。
そして、埼玉でも密かにフィンランド化が進んでいるようです。
先日、川越に行ってきました。地ビールの「コエドビール」直営レストランがJR川越駅西口のビルに入っています。
ヘルシンキでよく似たデザインのビルを見た覚えがあります。1階には埼玉のおみやげショップがあり、その名も”Moi Saitama Plus”。「モイ」はフィンランド語の軽いあいさつです。
飯能にムーミン谷のテーマパークができ、かなりの人気を集めているので、いっそのこと県全体をフィンランド化しようとしているのでは。首都東京に隣接し、東京の顔色をうかがいながら独自の路線を探っているのでしょうか。
川越に行ったのは、HafH(ハフ)のライトプラン(2980円)で1か月に1泊どこかに泊まれるのですが、先日の秋田旅行で泊まりたいホテルがHafHになかったからです。
それなら近場で一泊。ハフコインがあまり残っていないので、川越のゲストハウスにしました。
コエドビールが飲みたい勢いで予約したのですが、60代でゲストハウスってどうなんでしょう。伊東のゲストハウスは60歳以上お断りでした。若者の特権に年寄りが割り込むのはご法度なのかもしれません。
川越のChabudaiに行ってみると、そんな不安は一蹴されました。「つながる・たのしむ・ひろがる」のキャッチフレーズの通り、高齢者も受け入れてくれます。
感じのいい管理人の青年が切り盛りする夜のバーにやってきた女子は函館出身で高円寺を経て小川町に移住。渋谷のオフィスに出勤するのは2週間に一度だそうです。そして、ゲストハウスに泊まっている男子の実家は阿佐ヶ谷。私が東京の住まいに中央線を選んだのは、自由業が住みやすいから。昼間からいい大人がふらふらしていても奇異の目を向けられることはありません。
管理人の青年は佐賀出身ということで、日本の最高峰のサウナ「らかんの湯」の話題で盛り上がり、函館もサウナ天国という話になりました。
小川町移住女子は民泊関連の仕事をしているそうで、川越のゲストハウス運営者と情報交換するのはとても有意義でしょう。
思えば私もコロナ前には外国人向けゲストハウスの運営を夢見たものです。
さまざまな人生が交錯する川越のゲストハウス。奥の庭には眼鏡屋さん。受注生産の眼鏡は何か月も予約が詰まっていて、路面店では客の相手が面倒なのであえてここでの営業を選んだそうです。
もし私が30歳若かったら、高額な家賃の東京を出て埼玉に移住して新しいビジネスを始めていたかもしれません。
楽しかったけれど、川越滞在はものすごく疲れました。「イタい高齢者」と思われないように昔話、自慢、説教を極力避けました。そして、カーテンだけで仕切られた寝床は高齢者にはきつい。ドーミーインの個室でのびのび解放される旅がやっぱり楽です。
フィンランド化する埼玉の魅力にとりつかれたので、また行ってみたいと思います。都心から1時間で行ける別天地です。お風呂とサウナは「川越湯遊ランド」があります。