つい数か月前には想像もしなかったような展開が続く世界。
昨年の3月まで外国人留学生に日本語を教えていました。
2016年の春から教壇に立ち、目標は東京オリンピックまで4年間続けることでした。
結局3年で力尽きましたが、現時点で続けていたとしても留学生たちが帰国して自宅待機となっていたことでしょう。昨年まで日本語学校業界は深刻な教師不足が続き、修了した日本語教師養成講座からしょっちゅう教師募集の案内メールが届いていたものですが、ぴたりと止まっています。
私が教えていた渋谷の日本語学校は欧米の富裕層の子弟が多かったのですが、新型コロナウイルスはアジア発ですから、今後、我が子を日本に留学させようという親はぐっと減ることでしょう。
昨年3月で日本語学校を辞めて、自宅の大規模リフォームをして1カ月間住所不定の生活を送っていた頃、占い師仲間の天海玉紀さんの声をかけられ、ウラナイ8というグループを立ち上げることになりました。
貸会議室での講座や鑑定会を中心に活動しているのですが、このご時世でリアルに人が集まるのはむずかしくなり、Zoomや動画配信に取り組んでいます。
玉紀さんが「店を借りなくてよかった」とつぶやいていたのをきっかけに、私のまぼろしの計画が脳裏によみがえってきました。
日本語を教えていた頃に気付いたのは、民泊の規制が厳しくなるにつれて、ホームステイに切り替える半分業者のようなホストファミリーが増えてきたこと。
謝礼は一泊2500円で朝食と夕食を出すのでほとんど利益は出ないのですが、数人をまとめてホストすると話は変わってきます。6畳あれば2人OKなので、4人あるいは6人とまとめてホストする家があるのです。4人なら1日1万円、月で30万円になります。予約受付や集金は学校がすべてやってくれますし、旅行者と違い身元は確かです。学生に聞くと朝食はパンとコーヒー、夕食はカレー、うどん、餃子、焼きそばのローテーション。東京は外食が安いので、ステイ先で夕食を食べない学生もいます。
子供が独立して6畳の子供部屋が二つ空いており、家事が苦にならない主婦のいる家庭だったら、けっこういい商売です。複数の学生がいればSuicaの買い方や学校への行き方も先輩が教えてくれるので手間もかかりません。
何を血迷ったのか、これを私もやってみようかと考えていたのです。
近所の古い一軒家を借りて、ホットクックで自動調理。朝はパンとコーヒー、ヨーグルトでいいとして、皿洗いは食洗器、掃除はルンバ。
しかし、ネットで近所の不動産の相場を調べると収益を出すのはかなり厳しそう。都心から離れた郊外なら可能かもしれませんが、そこまで通うのは大変だし、日々起こるだろうトラブルの対処などを考えると、とても割に合いません。
そもそも東洋占術で見ると私には不動産運がまったくないのだから、自宅以外の住居を買ったり借りたりするのはかなり危険です。
自宅の仕事部屋を空けて、留学生一人をホストするのがちょうどいいのでしょう。収益は出なくても、留学生とじっくり向き合えますし、フィンランド人のヘンリク君のように一生続く友情に発展することもありますから。
もし勢いに任せて物件を借りていたら、敷金と礼金に加えて家具や寝具、調理器具、食器などかなりの初期費用がかかっていたでしょう。コロナ禍によって入居者ゼロになれば大赤字です。
ウラナイ8が発足したことで、手持無沙汰な感覚はなくなり、無謀な計画に手を出さずに済みました。
これは私が単にラッキーだっただけで、東京オリンピックを見込んで外国人向け民泊や飲食業を立ち上げた人たちはどうしのいでいるのでしょうか。
そういう人たちを自己責任だと責められるでしょうか。こんな事態、誰も予測できなかったのですから。
国からの補償がどういうものになるのか、混迷の日々が続きます。私が来月の家賃支払いに困窮せずに済んだのは、単に運がよかっただけですから、不運な人を自己責任と切り捨てる社会であってほしくないと思います。
スペインではドラゴンボールが大人気。亀仙人のTシャツを着ている人を何度も目にしました。声をかけて、私が日本人だと知ると、とてもうれしそうに言葉を返してくれたものです。
スペインは大航海国家だった名残か、アジア人への差別をほとんど感じることはありませんでしたが、新型コロナウイルスがアジア発ということで、日本人への視線も厳しくなっているのでしょうか。