「コロナ禍の日々をどう過ごすべきか」易を立てるべきですが、すでに卦はもたらされていました。天山遯(てんざんとん)です。
ウラナイ8のデイリーメッセージにも書きました。
1月末、アウシュビッツ解放75周年の記念式典で93歳の元収容者が「アウシュビッツは急に空から降って来ない」とスピーチしたと知った時、「コロナ禍も急に空から降って来ない」と思い至るべきでした。
最初は「ユダヤ人が外出していいのは何曜日だけ」「ユダヤ人はダビデの星を衣服に着けるように」といった差別でした。アメリカに逃れるのはごく一部のユダヤ人だけでしたが、最終的には冷静な分析ができる人や悲観主義者が生き残りました。
武漢のコロナ禍が日本の新聞に報じられるようになったのは1月半ば。専門家は感染が広がる可能性は低いとコメントし、大半の日本人は対岸の火事だと思っていたはずです。鳥インフルエンザ、SARSやMERSだって大騒ぎしたけれどたいしたことなかったし。
アウシュビッツの記念式典の記事を見て、易の天山遯が頭に浮かびました。占い学校でこの卦を学んだ時、ナチスの迫害から逃れたユダヤ人は天山遯の外卦である九四、九五、上九。上に行くほどうまく隠遁できます。
それなのに、のんきに南西の島旅を楽しみ、4月には台湾に行くつもりでした。2月末、元教え子の台湾人のメールに「先生、4月に台湾に来るのは無理かもしれません」とあっても、半信半疑でした。台湾人の危機意識は日本人と比べようもないほど高かったのです。JALは経営が苦しくなっているだろうに、キャンセル料なしで格安の早割チケットも全額払い戻ししてくれるので助かりました。
まだ感染者が出ていない県の友人は、3月末に上京する用事があったけれど、とても行けるような雰囲気ではなく、断念。彼女によると、その県では「東京は日本の武漢」。春休みになって帰省しようとする子供や孫を「絶対に帰って来るな!」と必死に止めているそうです。東京に行くのは中国の武漢へとても行ける状況じゃなかったと言います。
真偽のほどはわかりませんが、某県で新型コロナ感染第一号となった人が特定され、家の塀には「コロナ」と落書きされ、一家はいたたまれなくなって県外に脱出したとのこと。田舎の情報網はゲシュタポなみです。
ドイツのメルケル首相は1954年生まれですが、東独出身なので旅行や移動の自由を制限することに大きな抵抗があったようですし、安倍首相の「恐れるべきは恐れそれ自体である」はルーズベルト大統領の"The only thing we have to fear is fear itself"だから、次は日本版ニューディール政策を打ち出すのでしょうか。
開戦直後の日本人も、まさか原爆が落ちたり空襲で焼かれるとは想像せず、戦争はすぐ終わると楽観的に構えていたのでしょう。時代が違っても、人間の本質はあまり変わらないのなら、歴史を学ぶ意味は大いにあります。
『銃・病原菌・鉄』には、「白人はアメリカ先住民に天然痘の患者が使っていた毛布を送って殺した」とあります。病原菌の感染力の強さは歴史を大きく変えます。今回のコロナ禍が去っても私たちの世界は決して元には戻れないでしょう。
山形の銀山温泉。 天山遯は山の温泉のイメージです。
海外旅行だけでなく、国内旅行もむずかしくなるとは。温泉地巡りが楽しめるのはいつになるでしょうか。