京都に交換留学中のフィンランド人のヘンリク君が東京を訪れ、彼の希望で江戸東京博物館へ。
彼が初来日した4年半前に一度行って、よほど気に入ったのか再訪したいとのことでした。
江戸東京博物館のすばらしいところは、常設館のボランティアガイド。日本語だけでなく、英語・中国語・韓国語・フランス語・スペイン語・ドイツ語・イタリア語に対応しています。日によって対応言語が異なるそうですが、前回も今回もラッキーなことに当日申込で英語のボランティアガイドがついてくれました。
今回のガイドは、60代ぐらいの男性。「時間があるなら1時間半ご案内しますが、お急ぎなら短くもできます」とのこと。
ヘンリク君にとって日本史のおさらいをするのは有意義だろうと、じっくりコースでお願いしましたが、日本人の私にも興味深い内容でした。。
徳川幕府の成り立ちから江戸の市民生活、明治維新、太平洋戦争から現代まで情報量満載の英語ガイドでした。グループ向けではなくプライベートガイドのようなものですから、質問も自由にできます。
たとえば、鎖国の時代、ヨーロッパの国でオランダだけ日本と交流できました。それはオランダ人が実利主義で、キリスト教の布教を考えなかったから。スペインやポルトガルは宣教師を送り込もうとしていましたから江戸幕府は容認できなかったのです。
ヘンリク君が特に興味を持ったのが、江戸時代の風俗を描いた屏風絵。豪華なお弁当持参の花見や吉原に繰り出す旦那衆などが描かれています。
「この屏風絵は何のために描かれたのですか?」とヘンリク君がガイドさんに質問。
ガイドさんの回答は「江戸はこんなに楽しいところだと参勤交代で帰った地元の人々に見せびらかすためでしょう」。
「なるほど、江戸時代のインスタグラムだ! 時代が変わっても人がやることはそんなに変わらないものだ」
ヘンリク君はいつもユニークな発想で楽しませてくれます。
4年前とは説明の内容が違っていました。
前回は女性の方で、江戸の暮らしやエンターテイメントを詳しく説明してくれましたが、今回は歴史や社会体制の変遷が中心でした。決まったマニュアルはなく、ガイドの内容は個人に任されているのかも。
それにしても大変な仕事です。広い館内の展示を回りながら解説し見学者からの質問にも臨機応変に答える。今回担当してくださった方は、英語を使う職業で退職後ボランティアに志願したのかもしれませんが、あれだけの能力と労力を報酬に換算したらいったいいくらになるんだろうと、世俗の欲にまみれた私は考えてしまいます。
1月3日の日本経済新聞朝刊の「逆境の資本主義」シリーズ第2回には、ケインズの予言が紹介されていました。
100年後には1日に3時間も働けば生活に必要なものを得ることができるようになるだろう。
ケインズがこれを書いたのは1930年ですから、100年後の2030年まであと10年。
日本政府としては高齢者に死ぬまで働いてほしいでしょうが、30代や40代で経済的独立を果たしてアーリーリタイアをする人もいます。
英語ではFIRE(Financial Independence, Retire Early)。通常、fireといえば解雇ですから、遊び心のある呼び方です。
私もリタイアを考えていますが、経済的独立以上に気になるのが、あり余る時間をどう使うかです。暇を持て余して朝からアルコールに手を出すようになっては目も当てられません。