年初に箱根駅伝のテレビ中継を見るのは、極めて運のいい人たちの姿を拝みたいから。
陸上を志して箱根路を走るためには、才能と努力だけでなく、運も必要です。
親の理解があるか。そこそこのレベルの陸上部がある高校に進学できるか。そして、どの大学を選ぶか。身体能力だけでなく学力も問われるます。強豪校に入ると精鋭ぞろいメンバーに選ばれないリスクがあり、中堅校だとシード権を失って予選で敗退ということも。晴れて走者に選ばれたとしても、当日のコンディションが悪いと補欠選手との入れ替えだってあるでしょう。
そうした数多くの関門を潜り抜けた学生たちが東京から富士山に向けて走り、翌日には東京に戻ってくる。東京に住む者にとっては箱根というと小田急ロマンスカーで日帰りもできる気楽な旅路なのに、一歩一歩大地を踏みしめるランナーたち。
箱根駅伝に出場する20大学に加えて、出場権を得られなかった大学から1校1人で選ばれる関東学生連合チームも参加します。
今年の主将を務め、最終ランナーとして10区を走ったのは東京大学の阿部飛雄馬選手。「飛雄馬」という名前は元高校球児のお父さんの命名だけど、野球を強制されたことはなかったそうです。
たまたま目にした阿部選手のインタビュー記事で、あまりのユニークな発想に脱帽しました。
地元の進学校に進み、高校総体では障害走を選択。強い選手は長距離走を選ぶので、障害走は「穴場」だったから。そして、箱根を走るために東大に挑戦。浪人中は毎日12時間予備校にこもったというから、文武両道で努力できる人なのでしょう。
阿部選手ほど突き抜けていませんが、誰もが目指す王道ではなく裏道をいつも探してきた私。「人の行く裏に道あり花の山」という相場格言は座右の銘です。
しかし世間を出し抜く裏道は、危険もいっぱいです。
阿部選手の東大から連想したのは、昨年の年末に起こった「東大最年少准教授」を自称するAI研究者の炎上騒動。先端分野で日本最高峰の知性を持っているはずなのに、ネトウヨまがいのツイートを繰り返しました。
この准教授は、高専から筑波大学に編入し大学院へと進学。国立大学の入試では理系でも歴史などの雑学を詰め込まなければならないから、高専からの大学編入こそ最も効率のいい進路だと推奨しています。
なるほど、こういう手があったか。もし私が理系の高校生だったら、大いに心動かされたでしょう。
この准教授は東大生え抜きの大御所から「教養学部の必修カリキュラムを修めたなら…ここまでひどい無教養を晒すことはなかった」と批判されていますが、それもどうでしょう。東大は意識の高い学生が多いのかもしれませんが、普通の大学での教養科目は単位さえ取れたらいいといういい加減な学生だらけでした。一般入試を経て教養課程も修めた大卒のネトウヨだって掃いて捨てるほどいます。
六十四卦の一つ「天沢履(てんたくり)」。正しく道を履(ふ)まないと、虎の尾を履むと戒めています。
占いは天の秘密を垣間見て、自分に合った裏道を探すという側面もあります。裏道だからこそ、用心して履まないと落とし穴が待ち受けています。