「日本はバナナ共和国」という記事がワシントンポストに出ました。
バナナ共和国とは、中南米の発展途上国の蔑称。政治は私物化され、法律が公正に適用されない国のことです。アメリカには「バナナ・リパブリック」というサファリ風ファッションのアパレルのブランドもあり、日本にも進出しています。
政界は二世、三世議員ばかりで歌舞伎と同じように政治家は世襲。安倍首相の疑惑は文書偽装で、上級国民には警察は甘く、女子学生は医学部入試で減点。「バナナ共和国」と言われても反論できません。
フィンランドのマリン首相の父はアルコール依存症で母と離婚、LGBTカップルの貧しい家庭で育ちました。そして世界最年少の34歳で女性首相に。日本と何たる違いでしょう。
アメリカだってケネディやブッシュみたいな一族がいる一方で、ビル・クリントンがいます。生まれる3カ月前に父が事故死し、母の再婚相手はアルコール依存症。進学したジョージタウン大学では「アーカンソー出身の田舎者」と教授に馬鹿にされても、大統領になれたのです。
ネットフリックスの「クィアアイ」を見ているとメキシコから移民して魚屋を経営し、4人の子供を育て、シーフードレストランまでオープンさせるという男性や、韓国系二世で小児科医になった女性などが登場し、アメリカンドリームは今も健在のようです。
高卒で上京し働きながら夜間大学を卒業したという菅義偉氏が首相に就任するのは、格差が広がる一方の日本に一石を投じるのではないか。貧しさのために進学できない子供たちにとっては朗報だと思いました。
しかし、ちょっと調べてみると手放しでは喜べないような…。
菅氏の父は元満鉄の職員で郷里の秋田県に引き揚げ農業に順次。いちごのブランド化に成功し、町会議員も務めた名士です。母や叔母は元教師で、二人の姉も高校教師という教育一家。高卒で上京したのは農業大への進学を勧める父への反発のようです。
怖いのは生存者バイアス。
生き残った人だけを基準にして「たいしたことはなかった」と判断する傾向です。
先日、花王ロリエの「生理は個性」というプロジェクトが炎上しました。生理痛が本当にひどい人にとっては、個性なんて生やさしいものではないでしょう。このプロジェクトに関わった女性は、大手メーカーや広告会社に採用されて働き続けている生理の軽い人ではないでしょうか。
私はやたらと体が強い子供で、学校を病欠することはほとんどありませんでした。社会人になっても、体調不良で締め切りが守れない人が理解できませんでした。若い頃は「風邪なんて気力でなんとかなる」と本気で思っていました。これから老いて体が思うようにならなくなっていき、こうした傲慢さのツケを払うことになるのでしょう。
その一方で、家事が得意で自然に人の世話ができる女性からは「なんでこんなこともできない(しない)のだろう」と思われているかもしれません。
超高齢化が進む中、コロナに東京オリンピック、台風や地震などの自然災害のリスクにさらされている日本の舵取りは、並大抵のことではありません。親からの地盤もない中で地方議員から首相まで成り上がるほどの手腕がなければ務まらない難局でしょう。
菅氏が「俺だって大変だった。それができない人間は見捨ててもいい」という生存者バイアスを持っていないことを祈ります。
甘党でパンケーキ好きがすっかり有名になりましたが、出身の秋田の名物は金萬。「都まんじゅう」と呼ばれる白あんをカステラ生地で包んだおまんじゅうです。子供の頃によく食べた「天満屋まんじゅう」もこの系列で、なつかしいおいしさでした。
数年前、秋田駅から徒歩5分のところにある金萬の製造工場に行ってみました。直売店はなかったのですが、受付の人はとても親切で、できたてを食べさせてくれました。秋田の人は温かい。どうか菅首相もそんな秋田県人でありますように。