翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)、ビジネス記事翻訳。副業で外国人に日本語を教えていましたが、2019年3月で卒業。フィンランドが大好き。ウラナイ8所属。

アメリカの毒親『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』

日本では小学校と中学校に子供を通わせるのは親の義務ですが、アメリカでは開拓時代の伝統からか家庭で教育を行うホームスクーリングが認められています。資格試験を受ければ大学進学も可能です。知識も常識もある親の元で学ぶならそれもいいでしょうが、親が偏った思想の持主だったら?

 

モルモン教サバイバリストの両親のもとで生まれ育った女性が大学で学び、自分が育った家庭環境を否定する『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』。 

 

モルモン教キリスト教の一派で カルトとまでは言えないかもしれませんが、この女性の両親はかなり強烈。終末の日に備えて食料や燃料を備蓄し、学校や病院と無縁で7人の子供を育てます。上の子は出生届を出していましたが、5番目、6番目となると誕生日さえも不明です。だからといって子供を放置しているわけではなく、両親が信じる教えに従って厳格に育てられます。毒親といえば毒親ですが、スケールが大きく堂々としています。

 

学校に行ってもいいけれど、父の許しが必要だと母は言います。しかし父の前では「学校に行きたい」というのはいやしい好奇心のような気がしてとても言い出せません。見かねた祖父母が学校に通わせてくれるというのですが、やはり父のことを考えると決心がつきません。子供にとっては家族が全世界の中心ですから、わざわざ親に逆らう気にはなれなかったのでしょう。進学を決めたのは10代後半になってからです。

 

一家は父親の廃品回収やスクラップ、母親の助産婦、ハーブやエッセンシャルオイルによって生計を立てています。交通事故や仕事の事故で大けがや火傷を負うのに誰も死なず、母親の治療で治ってしまう。この一家、子沢山な上に生命力が半端ない。そして知力にも恵まれているのか、7人のうち3人が大学に進学し博士号を取得しています。

あまりの内容にフィクションじゃないかと疑われたそうですが、まさに事実は小説より奇なり。

 

ヒルビリー・エレジー』も一族のうち誰も大学に行ったことがない貧しい家庭から進学し、社会的成功をつかむ話ですが、まだこの一族のほうが想像できます。 

bob0524.hatenablog.com

 

『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』の著者は、ブリガム・ヤング大学に進学し、教授の推薦を受けケンブリッジに留学し、ハーバードで博士号を取得。世界最高峰の教育を受けたわけですが、そうなると両親とは全く別の世界に生きることになります。

この本を出版したことで両者の対立は決定的となり、あれほど連邦政府による管理を忌み嫌っていた両親が娘の書いたものを事実無根とし弁護士を雇って訴訟を起こしたそうです。

そうした結末を知ると、教育の力は偉大だと手放しで絶賛できません。もし大学に行かなければ、母親のように子供をたくさん産み一族で力を合わせて暮らしていたかもしれません。

 

東洋占術の講座で幸福には「成敗」と「禍福」の二種類があると学びました。「成敗」は社会的な名誉、禍福は個人の満足。たとえば『ロミオとジュリエット』は社会的には悲劇ですが、若い二人だけの世界では愛する人と死を選ぶことはこの上ない幸福だったかもしれません。

 

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ハノイ孔子廟。かつての東洋社会では、高等教育を受けられるのは男性だけでした。女性にも教育を受ける権利が与えられたことは喜ばしいことですが、それによって生じた不幸もあるわけで、どの時代も生きていくのは大変です。