翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

地獄の沙汰はアイデアと人間関係

別府で地獄めぐりのバスに乗ってみました。

別府観光の父と呼ばれる油屋熊八はバス会社を創業し、日本初の女性バスガイドがたいそうな評判となったと聞いたから。

「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」をキャッチフレーズにした油屋熊八は七五調を好み、案内も七五調に。ガイドさんが当時の案内の一部を聞かせてくれました。

 

昔は熱湯や泥が噴出している場所は不吉な場所として恐れられ「地獄」と呼ばれていましたが、傷を負った武士の療養に温泉が使われるようになり、江戸時代にはにぎやかな温泉地に発展。昭和3年に油屋熊八が遊覧バスを開始したことから観光資源として活用されるようになりました。

 

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地獄は何種類もあり、レンタカーなど借りてお好みの地獄を訪れることもできますが、バスツアーは各地獄の入場券が込みになっていて周遊します。

 

コバルトブルーのお湯の海地獄、真っ赤な血の色地獄、泥が坊主頭のように盛り上がる鬼石坊主地獄、間欠泉が噴き出る龍巻地獄など。

それぞれの地獄が特色を出そうとしているのにも感心しました。海地獄はアマゾンから取り寄せた蓮が見事だし、鬼山地獄ではワニ、白池地獄は熱帯魚を飼育しています。かまど地獄では、温泉の熱を目に見えるようにする煙を吹きかける公開実験が行われ、血の池地獄は、赤い粘土から作った軟膏が特産品。龍巻地獄は、ナチュラル志向で園内の果樹園で収穫された果物のジュースやジェラートを販売しています。他の地獄と差別化するためにアイデアを競っているのでしょう。地獄の経営もなかなか大変です。

 

バスガイドさんは若い女性でとても話好き。「ガイドの仕事がない時はデスクワークをしなくてはいけなくて、とても苦痛」と、バスガイドが天職なのでしょう。訪問先ごとに親しそうに挨拶をかわしていました。

 

参加人数が少なかったこともあり、地獄の裏話もたっぷり聞かせてくれました。

地獄の所有者たちは組合を作ってバス会社と提携したり周遊チケットを販売しているのですが、組合から脱退した地獄もあるそうです。地獄の人間関係もいろいろあるのでしょう。

脱退したのは山地獄。ミニ動物園を併設し、子供連れには人気があるそうです。動物好きで人間が苦手なオーナーなんでしょうか。

そして、金龍地獄というゴージャスな名前の地獄が見えるのですが、営業していないそうです。別府の地獄では最も多量のお湯を湧出していたというのに、いったい何があったのでしょうか。看板はそのままになっていて、この地獄が一番恐ろしいと思いました。地獄も現世と同じく世渡りはむずかしいのでしょう。このままコロナによる観光自粛が長引けば多くの観光業が地獄を見ることになるでしょう。

 

コロナが収まって地獄めぐりにお客が戻り、多くの人が地獄のお湯を楽しめるようになることを祈っています。