翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。2025年夏、ガルシア=マルケスの聖地巡礼でコロンビアへ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで四刷になりました。

ペンタクルの5とコロンビアの市長

年末になるとタロットカードで来年の流れを見てもらうことが多くなります。

プラムさんに来年の旅のテーマを占ってもらったら、最初に出たのがペンタクルの5。テルミライト花さんの「来年への寿ぎ」もペンタクルの8と5でした。

 

ペンタクルの5はスミス・ウエイト版では別名「貧乏人のカード」。

私はステンドグラスの内側でぬくぬくとして、寒い屋外で困窮している人々の存在を忘れています。

日本は豊かな国だったはずですが、いつのまにか貧しい国に転落。もう見て見ぬふりはできなくなるのかもしれません。

そして、来年の旅では、資本主義の最前線に触れ、通貨危機に陥った国のその後を見ようと思います。

 

今年の旅のハイライト、コロンビアでも資本主義について考えさせられました。コロンビアは貧しく犯罪が横行している国というイメージが強かったのですが、実際に行ってみると東京より安全で優しい街でした。

 

そうした都市を作るために尽力したのが、首都のボゴタ市長を務めたエンリケ・ペニャロサです。

 

digitalcast.jp

「先進的な都市とは、裕福な人でも公共交通を使う都市」「都市の質は、最も貧しい市民がどれだけ尊厳を持って生活できるかで測られるべきだ」というポリシーがすばらしい。歩道や自転車専用道路を作り、都心から離れたスラムに暮らす人々にバスという交通手段を提供。「80人乗りのバスは、一人しか乗っていない自動車より80倍の道路を使う権利がある」と、バス専用レーンも設置。バスは渋滞しないので、通勤の足となり、多くの人が仕事に就くことができました。

 

もちろん、簡単な道のりではなく自動車所有者(富裕層)の既得権との厳しい戦いです。市長の髪はすっかり白くなり、弾劾寸前の目にもあいました。

In my city of Bpgota, we fought a very difficult battle in order to take space from cars, which had been parking on sidewalks for decades, in order to make space for people that shoud reflect dignity of human beings, and to make space for protected bikeways.

ボゴタでとても困難な戦いをしました。何十年も歩道に駐車され続けてきた場所から人々が尊厳を持てるような場所を作るため、そして安全な自転車道を作るための戦いです。

 

コロンビアに行く前は不安だらけだったのですが、行ってみたら楽しいことだらけで、ボゴタは散歩するだけで楽しくなりました。特に日曜日。市内の道の多くが自動車通行禁止となり、フリーマーケットがずらりと並びます。

 

占い師も店を出していました。

 

カード出し過ぎで占いは今一つでしたが、こうした自由なマーケットがある都市は素敵です。ここでもペンタクルの5が出ました!

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帰国して羽田から空港バスで新宿駅に出てました。たくさんの人々がせわしなく移動し「Suicaの残金不足とかでこの流れをせき止めたらどれだけ冷たい視線にさらされるのだろう」と想像して怖くなりました。

 

このまま円安が続けば、生活が苦しくなる人がますます増えるでしょう。ボゴタのカード占いは1万コロンビアペソでした。当時のレートでは380円だったのが今は400円強。ドルやユーロだけでなくあらゆる通貨に弱くなり、トルコリラジンバブエドルと肩を並べるとさえ言われています。

貧しくても尊厳を持って暮らせる国を実現してくれる政治家は出現するのでしょうか。そして、通貨危機に陥っても生活は続くことを、25年前にIMF管理下に陥ったソウルや通貨の暴落が続くイスタンブールを旅して、自分の目で見てきます。

 

温泉津(ゆのつ)・海辺の宿と進化する街

台湾から帰国して落ち着く間もなく島根へ。

このところ通っているのが温泉津(ゆのつ)です。お湯が素晴らしいのに加えて、港町らしい開放的な雰囲気。若い移住者によるユニークな飲食店もオープンしています。

これについては、島根在住の友人から「あなたの予言通りになった」とよく言われます。最初に彼女に連れて来たもらった時は温泉旅館ばかりで「素泊まりのゲストハウスができれば何度も来るのに」とつぶやいていたのです。

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保守的な島根県では、観光地以外の場所をよそ者が歩いているとすぐ噂になり素性を探られると友人は言います。その点、温泉津は湯治客と観光客がいるのが当たり前ですから、不審に思われることはありません。

 

温泉津の活性化の立役者は近江雅子さんという女性。

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今回は海辺のゲストハウス、KAZETOに泊まりました。

角部屋を選んだので、二面を海に囲まれます。日の出と日没の時間は刻々と変わっていく海の景色を見ているだけで飽きませんでした。

 

かつては石見銀山から掘り出された銀が、ここから世界に出荷されました。

 

KAZETOは温泉街から少し離れているのですが、その代わり「才市の湯」が近くにあります。番台に座っていた若い女性は東京出身。サンライズ出雲で東京と行ったり来たりしているそうです。

二つの共同浴場とはまた違ったお湯で、少しぬるめで就寝前に入るのにぴったり。

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なにしろ元湯の「あつ湯」は足先がヒリヒリしてくるようで、絶対無理だと「ぬる湯」ばかり入っていたのです。番台の女性に「そんな固定観念に囚われているようじゃ何もできん」と檄を飛ばされ、あがり湯として10秒ほど入るようになりました。

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温泉津がおもしろいのは、訪れるたびに進化しているところ。

チェックインの際、近江さんに「本がお好きでしょう?」と、新しくできた貸本古民家を教えてもらいました。

 

入場無料。無人なのでコーヒーやお茶は自分で淹れて100円を缶に入れます。宿に持ち帰って読みたい本があれば、ノートに名前を書けばOK 。2階も読書スペースです。

古民家をここまでリノベーションするにはどれだけのコストがかかっているんだろうと下世話な私はつい考えてしまいますが、温泉津を盛り上げたいという人々の想いが伝わってくる空間です。

 

そして近江さんのお嬢さんからは「音楽がお好きでしょう?」と近江さんのご主人が住職を務めるお寺で夜にライブがあると教えてもらいました。

 

清少納言が「お経を読む僧はイケメンじゃなければダメ」とお寺をライブ会場扱いしていましたが、こんな感じだったのかもしれません。

東京にいるより遥かに文化的に過ごした温泉津。来年もまた行きます!

 

台北で書道ワークショップ

台北で楽しみにしていたのが、書道のワークショップ。

お父さんもお兄さんも書道家という若い女性が運営する"Ginn Caligraphy 日月晴書法工作室"。この日の参加者は私とイスラエルカップルの計3人です。

私のファーストネームに「明」の字が入っているので、「日月」という名前に親しみを感じたと自己紹介しました。さらにGinn先生のファミリーネームは「林」で私は「森」。どれも説明しやすい漢字でイスラエルカップルは「すごい偶然だ」と驚いていましたが、どれも名前によく使われるありふれた漢字です。

 

漢字の歴史や種類のレクチャーがあり、水で書くシートで丸や線を練習します。漢字を使う日本人ならお手の物のはずが、筆を握ったのは中学校の授業以来です。パソコンやタブレットローマ字入力で手書きも少なくなっていますから新鮮な体験でした。

 

「とめ」「はね」「はらい」などを練習したら、自分の好きな漢字を選びます。

その日の朝に訪れた仏教カフェの窓に書いてあった言葉が心に残っていたので、Ginn先生に見せて相談。

一番左、「人生には所有権はない。ただ生命を使用する権利があるだけだ」。言語は違っても、漢字で意味がわかります。真ん中は「家屋は心ほど広くない」。狭い家に住んでいても心は自由という意味でしょう。そして左は「成功は忘れ、過ちは覚えておきなさい、恨みは忘れ、恩は覚えておきなさい」。

 

世界はメッセージに満ちているのです。

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占いの分野では私の専門は周易で、心理学者のユングが易を好んだこともあり、西洋人で学んでいる人もたくさんいます。「易経」の英文訳を読むと別の視点からのイメージが広がりおもしろいのですが、やはり漢字がわかるのは大きなアドバンテージです。

 

結局、私が選んだのは「無常」。小津安二郎の墓は「無」の一文字だけだったのを思い出しました。台北の習字教室で、先生を囲んで生徒3人で漢字の練習をしているのは、常ではなく一回きりだからこそ素晴らしいことだから。

 

しかし、書き始めて見ると「無」はバランスよく書くのがとてもむずかしい。

イスラエルカップルの男性はこの日が誕生日で、射手座(人馬宮)の「人馬」、女性はチャイニック・ゾアティック(十二支)が辰年なので「龍」を選びました。

 

私だけ楷書で、二人は草書。こうして並べてみると、「龍」と「人馬」はアート風でかっこいい。私は文字の意味にとらわれ過ぎで、先生からは「もう少し小さめに」とアドバイスを受けたのに細部までお手本通り書こうとして字が大きすぎです。

 

それでも、書道の楽しさに目覚めました。紙に筆を走らせていると無心になれます。今さら日本の教室に通う気にはなれないので、次も台北でGinn先生に個人レッスンをお願いしようかと夢がふくらみました。

 

ジェンスン・フアン流「マイナスに飛び込め」

ウラナイ8の玉紀さんが「タローマン」を布教するので、映画も見ました。岡本太郎の名言が散りばめられていますが、特に心に残ったのが「マイナスに飛び込め」です。

 

占いをやっていると、人生は吉(プラス)ばかりが続かないと実感できます。どうせ凶(マイナス)が来るなら、あえて飛び込んでみてはどうでしょう。

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50代の新人教師はさすがにきつくて、3年でギブアップ。その後コロナで留学生がいなくなりましたが、コロナ明けには何度か学校から復帰の打診をされたので、とりあえず人並みのことはできていたのでしょう。

人手不足で高齢者も働くのが当たり前になりつつあり、どこかで働いてみようかと考えたこともありますが、旅行ばかりでシフトに入れずかえって迷惑になりそうだから思いとどまっています。ライターとして30年以上働き続けたのに加え、日本語教師もやってみたことで、「仕事はやりきった」という達成感があります。

 

エヌビディアのCEO、ジェンスン・フアンがスタンフォード大学の学生に向けて送った「君たちの人生に多くの苦しみと痛みあれ」というメッセージも「マイナスに飛び込め」に通じます。

 


www.youtube.com

 

ジェンスン・フアンは何に対しても期待値が低いのに対し、スタンフォード大学の学生はとても高い期待値を持っていると語ります。優秀な学校を成績上位で卒業し、馬鹿高い学費も払える順調な人生だから。でも期待値が高すぎる人達は耐性(レジリエンス)がかなり低いのです。そして、成功するためにはレジリエンスは絶対に必要。だから、仕事における苦悩や挫折は喜ぶべきことだと受け入れるべき。良いカルチャーの会社を作ったりすばらしい成果を出すのは、頭の良い人間ではなく苦労した人間だからスタンフォードの学生たちにも「たくさんの苦しみと痛みあれ」と願います。

 

ジェンスン・フアンの通称は「革ジャン」。スティーブ・ジョブズの黒のタートルと同じく、毎日の服選びという余計な決断を省くためにレザージャケットをいつも着ています。台湾に生まれ、9歳で兄とともに渡米。両親が名門の寄宿学校だと思って彼を入れたのが、非行少年を集めた矯正のための施設。タトゥーまみれの不良に脅される毎日をサバイバルしたからこそ、今のジェンスン・ファンがあるのでしょう。

オレゴン州立大学卒業後、スタンフォード大学修士号取得。スタンフォード大学には3000万円ドルを寄付してエンジニアリング・センターを設立しました。私が教育機関に寄付を始めたのは彼の影響もあります。

 

ジェンスン・フアンにあやかって、彼が台湾を訪れた際に部下を引き連れて利用したというマッサージ店「6星集」に行ってみました。

中国語では「6」は「流れ」や「なめらか」を意味する言葉と発音が似ているため、縁起のいい数字とされています。

 

ジェンスン・フアンもこの空間にいたのだと想像し、気分は大富豪。しかし、支払いでJCBカードを出すと、親切な受付の女性から「JCBならクーポンが使えるから、検索しなさい」と言われ、現実に引き戻されました。

 

たまたま学生時代の友人グループからのlineがあったので「台北でジェンスン・フアンの聖地巡礼をしている」と返したら、台湾のアイドルだと思われました。ソウルや釜山でBTS聖地巡礼ばかりしていたからですが、世界のテック業界ではトップクラスのアイドルです。

台北・隠者の宿

夫が一足先に帰国し、台北滞在の後半は一人で3泊。

どこに泊まろうかと検索して見つけたのが、ハーミット・ドーム。タロットカードの隠者、ハーミットを冠した宿なら、ぜひ泊まってみたい。村上春樹の小説で、北海道の宿を決めるのにホテルの名前を片っ端から読んでいって「いるかホテル」に決めたシーンを思い出しました。隠者の宿だから小隠居です。

hermitdorm.tw-taiwan.com

 

この2年間、台湾と韓国をけっこう訪れてきたのは、2023年のスペイン巡礼で知り合ったスンヒと再会したかったから。でも、すれ違ってばかりです。

ソウルでスンヒと会えると思ったら、スンヒはスペインの巡礼宿でボランティア仲間として知り合った台湾人男性と結婚するため台北に移住していました。

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一昨年は台北で会えるかと思ったら、たまたまソウルに帰省中。今回は3度目の正直のはずですが、今回もスンヒはソウルの実家でした。「不妊治療中で、体外受精を試すのならやはり母国のほうが安心だから」とスンヒ。そういう事情なら、こちらは静かに彼女の幸せを祈るしかありません。

 

台北には巡礼で知り合った葉さとん楊さんもいます。前回は台北でたいそうなおもてなしを受けました。「次はぜひ日本で」となったのですが、まだ実現していません。連続でお世話になるのも気が引けて今回は連絡しませんでした。

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ヘンリク君と張さんとは夫も交えて4人で食事をするはずだったのですが、前日にヘンリク君が台湾一の高峰、玉山(旧名は新高山)に雪山登山して風邪をひいてしまってキャンセルになってしまいました。

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結局、張さんと二人でお茶を飲んでお土産を渡しました。漫画『ひらやすみ』と『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の二冊。

 

 

真造圭伍と谷口奈津子は夫婦で、両作品とも舞台は阿佐ヶ谷近辺。ヘンリク君が初来日してホームステイで3週間過ごした街だから、なつかしいのじゃないかと思って選びました。日本語を学び続けている張さんもおもしろく読んでくれるかもしれないし。

張さんはフィンランドの大学院進学も考えているとのことで、二人はいつまでも台湾にいるわけではなさそうです。

 

若い人たちはみんな次の展開へと駒を進めていますが、私は隠者として同じ場所にとどまったまま。だからハーミット・ドームにしっくりなじみました。

 

それでもチェックインの時は「本当にここに宿があるのか」と不安になりました。複数の会社が入っている古い大きなビルでハーミット・ドームの看板は出ていません。入口の守衛のおじさんに聞いても中国語しか返ってこなかったのですが、エレベーターに進むのを止めないので合っているのだろうと17階へ上がりました。

エレベーターの扉が開いた瞬間、リノベーションされたお洒落な空間が広がり、フロントには親切な青年。まだ午前11時なので荷物だけ預けるはずが、「部屋はもう準備できているから」とチェックインさせてくれました。

 

ドアを開けると、一目で好きになる部屋でした。

窓から基隆河の流れが見えました。台北をもっと知るために、またここに滞在できるといいのですが。