翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで四刷になりました。

朽ちていく橋に自分を重ねる

帯広は何度でも行きたい地。JALのバーゲンがあると、つい航空券を買ってしまいます。

モール泉にサウナ、水風呂。駅前の徒歩圏に何軒もの選択肢があるのですから。

 

先月の帯広の旅は少し長めの日程にして、糠平温泉まで行ってみることにしました。

タウシュベツ川橋梁を見たかったからです。

 

国鉄士幌線のコンクリートの橋。ダムの建設によって湖底に沈みましたが、水が少なくなると姿を現すのです。9月下旬は、雨量や電力需要の関係で見える年もあれば見えない年もあるという微妙な時期でしたが、無事に目にすることができました。

 

以前は地元の人が橋に腰かけて釣りをするようなのどかな場所だったそうですが、橋の独特な形状と崩落具合、湖面に移る姿が知れ渡り、人気の観光スポットに。橋への林道での事故が多発したことから、現地で許可をもらうか、現地ガイドの有料ツアーに申し込まないと橋まで行けなくなりました。1か月ほど前に申し込んだところ、残席わずかでぎりぎりで滑り込めました。

 

12人乗りの車で橋の近くまで移動して、貸してもらった長靴を履いて1時間ほどの自由時間。ガイドさんと一緒に川を渡って橋の反対側まで行けますが、高齢の方は足腰に自信がないのか、その場にとどまっていました。

流木をトレッキングポール代わりにして歩きましたが、川まで下る道では転ばないかひやひやしました。川の流れもけっこう急で、足を取られそう。「いつかそのうち」と先延ばしにせず、今来てよかったとつくづく思いました。私の足元がおぼつかなくなるのと、タウシュベツ橋が完全に崩壊するのと、どちらが先でしょうか。

ガイドさんによると冬はスノーシュー(西洋かんじき)を履いて氷の上を歩いて橋まで歩くツアーもあるとのこと。チラシをもらいましたが、とても参加する勇気がありません。

 

反対側に行くと、コンクリートの崩落がかなり進んでいて、内部に詰めた石も見られます。完成したのは昭和14年。今のような重機のない時代、人力でこの橋を作るのはかなりの重労働だったはず。昭和30年、橋が湖に沈むと知ったとき、建築に携わった人はどんな気持ちになったことでしょう。

 

大手のツアーも日程に組み込むほどの人気で、団体客がどっと来る時間と重なると秘境感がなくなります。糠平温泉にとっては人気の観光スポットですから、橋を補修して延命させるのかと思ったのですが、直す意味がないのでこのまま自然に任せるそうです。

 

平均寿命はどんどん延びていますが、人体の耐用年数は50年ほど。六十干支が一回りする60歳の還暦当たりで亡くなるのが、生物としては順当なのです。

耐用年数を越えて生き続けている自分の姿をタウシュベツ橋に重ねました。崩れかけてみっともないけれど、そこに味があるような生き方を目指します。若い人に「あんなに楽しそうなら年を取るのも悪くない」と思ってもらえるのが理想ですが、年々楽しめることは減っていくのはしかたがありません。