翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

さよならは言わない、またどこかで会おう

釧路の旅の思い出。

一人旅でちょっと大変なのが食事。東京ならおひとり様向けの店も探せますが地方ではなかなかありません。混んでいる時間の一人客は迷惑かと、午後のおそめの時間にランチタイムの指定がない定食屋さんに行ってみました。お目当てはカキフライ。釧路なら、厚岸のカキを使っているでしょう。

店に入ると客はいなくて、ワンオペで回しているらしいシェフがまかないを食べていました。大失敗! 恐縮して「時間はあります。どうぞ最後まで召し上がって、それからでいいです」と口走ったものの、プロの料理屋さんならそんなことをするはずがありません。すぐ厨房に入ってカキフライを揚げてくれました。

 

揚げたてのカキフライは夢に出てくるようなおいしさ。私のために料理してもらったという特別感がスパイスとなっていたからです。

お会計をすると、お釣りと一緒に次回に使える無料コーヒーチケットが。「旅行者なんです」という言葉を飲み込み、ありがたくいただくことにしました。

 

映画『ノマドランド』のボブ・ウェルズの台詞が心をよぎりました。

I’ve met hundreds of people out here and they don't ever say a final goodbye. I always just say, I'll see you down the road".

ここで何百人と会ったけれど、誰とも最期の別れを交わさなかった。「いつかどこかで会おう」と言うだけだ。

"down the road"というイディオムが、「いつかどこかで」と車上生活をかけていて、とてもしっくりきました。

 

この映画を観たのは三宮。神戸の実家で父の四十九日を終えた日です。お坊さんは、父は彼岸に旅立ったとおっしゃったけれど、さよならなんて言わなくていい。私もいつかそこに行ってまた会えるから。

この世で会う人もみんなそう。だからさよならは言わず、にっこり笑って別れます。

 

最終日は、山花温泉リフレ泊。釧路空港に近く、サウナと水風呂があり一人泊もOKなので選んだのですが、釧路駅からの直行バスは日に2便。イオンモールまで出れば、そこから始発の便もあります。駅のバスセンターの人が親切にあれこれ教えてくれました。

 

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別名が釧路市農村都市交流センターというので公共施設なのでしょうか。一人泊も格安料金で泊まれます。チェックイン前でもこんな景色を見ながら自習室で仕事できます。

 

夜のお風呂に行くと、小学高学年の女子グループが。「こんばんは」と明るく挨拶してくれました。地元の子供会かと思ったら、朝食レストランで修学旅行だと知りました。いかにも働き者らしい女性スタッフが常連さんに「お客さんが少なくて暇でやってられないけれど、昨日は修学旅行があったから」と話していたのです。

 

チェックアウト時、他にお客さんがいなかったので「修学旅行の生徒さんたち、どこからですか? とても元気よくて礼儀正しかったので」と聞いてみました。

フロントの男性はもしかしたら支配人? 道東の修学旅行事情について説明してくれました。小学校6年で道東内で一泊、昨夜のお風呂で会ったのは北見の小学生でした。中学3年で札幌、高校の修学旅行で本州となるそうです。

「先生が転任して、修学旅行先で食事がおいしいのはどこだったという話になって、うちが選ばれることもあるんです」と嬉しそうに話してくれました。フリーランスの極意も同じです。目の前の仕事をちゃんとこなしていれば、別から声がかかるものです。

 

コロナで自粛が続いているけれど、修学旅行は一生の思い出だから、中止にならなくてよかった。そんな話をしていると、生徒さんたちがフロント前に集合してきました。一学年男女合わせて20人ほど。この年齢は女子のほうがずっと大人っぽい。

心配しながら送り出した親御さんたちは私よりずっと年下でしょう。へたすると私と同世代の祖母もいるかも。

向田邦子が同窓会で鹿児島に行き、同級生の恩師による出産祝いの植樹が大木となっていて、自分が得られなかった人生をまざまざと見せつけられたという話を思い出しました。

 

元気に挨拶してくれた小学生女子たちにもさよならは言いませんでした。またどこかで会いましょう。