コロナが収束したとしても、世界は二度と元に戻らないのでは。
その一つが旅。海外はおろか国内旅行もはばかられます。伝染病が蔓延すると、よそ者は徹底的に排除されますから。
2月にNHKラジオの「高校生からはじめる現代英語」では「最も人気のある旅行先ははバンコク」というクレジットカード会社のプレスリリースを取り上げていました。東京は9位です。
Over the past 10 years, the world has seen economic ebbs and flows. But one thing has remained constant: people's growing desire to travel the world, visit new landscapes, and immerse themselves in other cultures.
過去10年、世界は経済の盛衰を繰り返してきました。しかし、世界を旅して新しい風景を訪れて異文化にどっぷりつかりたいという人々の欲求の高まりは不変です。
東京オリンピックも予定されていたし、インバウンド需要は夏まで続くし、日本人の旅行熱も続くだろう。私もどんどん旅に出よう…と、つい数カ月前までのんきに考えていたのです。
コロナ禍は10年間のスパンの経済の盛衰など通り越して、私たちは何百年に一度の歴史の転換点を目撃しているのかもしれません。
今は本やドラマで未知の土地へ思いを馳せています。そして、旅先でのふとした出会いや会話をなつかしく思い出しています。
5月1日から朝日新聞で「私のおこもり術」が始まりました。第一回目に登場するのは作家の佐藤優氏。512日間の拘置所生活に比べたら、ステイホームにはストレスを感じないどころか、移動時間がなくなった分、生産性が上がったとのことです。
拘置所体験に続き、モスクワでのエピソードが語られます。
佐藤優氏は航空機が好きなんでしょう。執筆の気分転換には、ツポレフ114という旅客機の模型を眺めるそうです。
高校生のとき、旅先のモスクワ郊外の空港でこの飛行機をうれしそうに眺めていたら、監視係の女性がこっそり「写真を撮っていいよ」と言ってくれたことがあります。モノと結びついた、人との間の温かい記憶。こんなことを思い出す楽しみ方もあるのです。
昨年春に訪れたバンコクのジム・トンプソンの家。タイシルクを世界に広めたアメリカ人です。
入場券を買うと、言語別にグループに振り分けられます。日本語が堪能なガイドさんの案内で部屋を次々と見学。ジム・トンプソンは風水に基づいてこの家を建てたと聞いたので、「具体的に風水に結びついたものがこの家にありますか」とツアー終了後、質問してみました。ガイドさんはわざわざ部屋まで戻って私に風水の図を見せてくれました。
観光客が激減して、あのガイドさんはどうしているのでしょうか。お土産を買わないことにしているので、併設のショップで何も買いませんでしたが、小さな絹製品でも買っておけばよかったと後悔しています。