小池龍之介「平常心のレッスン」(朝日新書)では、食べることが瞑想修行につながると説いています。
タニタ食堂では、食事時間の目安を20分としていますが、小池氏が主催する「食べるレッスン」では、数口で食べてしまうようなケーキを、一口ずつ徹底的に咀嚼して、20分から30分かけて食べるそうです。
そうすると、これまで感じたことがなかったような満足感が得られるそうです。途中で満腹になって、ケーキを食べきるのがむずかしくなる人もいるとか。
忙しい現代人は、一日三食そんなにゆっくり食べることは無理でしょうから、一日に一度、あるいは週末だけでも、時間をかけて食べることを実践してみてはどうでしょうか。
一年前に伊豆の断食施設「やすらぎの里」に一週間滞在したことも、食べることの重要性に気づく大きなきっかけとなりました。
一週間の滞在といっても、ずっと断食をするわけでなく、後半の3日間で徐々に回復食となり、最終日には普通食が出ます。
「やすらぎの里」はなかなか手軽に行くわけにはいかないので、日常生活では、小池龍之介氏の著作を読んだり、道元の「典座教訓(てんぞきょうくん)」、「赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)」をひもときます。
典座とは、禅の道場で食を司る僧侶のこと。
典座教訓には、「一本の野菜を手に取り、一丈六尺の仏の身として用い、十分に活用し、また一丈六尺の仏身を一本の野菜にこめて、これを大切に用いることができるのは、これこそ本当の神通力というものである」といった心構えが書かれています。
一方、赴粥飯法は、食事をいただく修行僧の心得です。
たとえば、食べる前に「目前に置かれた食事ができあがってくるまでの手数のいかに多いかを考え、それぞれの材料がここまできた経路を考えます。
講談社学術文庫に収められている典座教訓、赴粥飯法の訳者の一人、中村璋八先生には、湯島聖堂で五行大義の講座を受けました。
残念ながら中村先生がご高齢で体調がすぐれず、講座は終了してしまいましたが、陰陽五行だけでなく、この本の存在を教えていただいたことも大きな収穫です。
師だけでなく、本との出会いも人生を大きく変えるものです。
甲府でランチ。地元産の野菜や果物をいただくことは、旅の大きな楽しみの一つです。