昨年読んだ本で最も役に立ちそうなのがこの本。
スイッチ! ──「変われない」を変える方法 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: チップハース,ダンハース,千葉敏生
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/10/06
- メディア: 文庫
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この本については、一度書いています。
飲み過ぎ・食べ過ぎの対策として、自分の意志力を過信しないことを学びました。
他にこの本で感銘を受けたのは、「変化を細かくする」という章。
新年を迎えてあれこれ目標を立てたものの、すでに実現をあきらめているなんてことはないでしょうか。
それは、目標が大きすぎたから。変化を実感する単位を細かくすればいいのです。
たとえば、掃除。
年末ぎりぎりまで仕事をしていたので大掃除までとても手が回らず、「大掃除の必要がないように、日ごろから計画的に掃除をしよう」と思うのですが、年が変わってもあいかわらずの忙しさで家は散らかったまま。
一日ごと一時間ごとに部屋の書類の山は高くなり、洗濯物の量は膨れ上がり、食器棚のほこりはたまっていく。問題が悪化するにつれて、恐怖は増していく。すると家を掃除する気がなくなり、ますます家は汚くなっていき……まさに悪循環だ。
恐怖。
家が汚いだけで何が恐ろしいのでしょうか。でもたしかに、いつまでも片付かない部屋にいると恐怖を感じます。その理由は「家を掃除ずるためには、家がきれいになるまで作業しなければならない」と恐怖するからだと説明されています。
その最終状態までの道のりを想像し、クロゼット、食器、カーペット、トイレ、床などゴールにたどり着くまでに手をつけなければならないものすべてを思い浮かべると、ドアさえ開けるのが怖くなる。手に負えないと感じるからだ。
そこで、家を完全にきれいにするのではなく、「今よりきれいにする」という小さな目標にすることで、恐怖から解き放つのです。
その具体的な方法が「5分間お掃除レスキュー」。
キッチンタイマーを用意して5分間にセット。家の中で最悪の部屋に行く。タイマーをスタートさせたら、手あたり次第に片付けていく。タイマーが鳴ったら作業は終わり。
もちろん5分間でできることは限られています。でも、とりあえず始めることで、自分にもできるという自信が持て、恐怖が消えます。
「面白くもない作業を始めるのは、それを続けることよりむずかしい」
5分という短い時間を設定することで始めるハードルはぐっと低くなります。
『スイッチ』では人間の精神的エネルギーは有限だと繰り返し説かれています。
そして理性より感情のほうが人間を動かすのです。
次に紹介されているのが負債と戦う「雪だるま式返済法」。
たとえば学費ローン、住宅ローン、自動車ローン、さらにクレジットカードで借金を重ねた夫婦。
「雪だるま式返済法」では、まず負債をすべてリストアップして、金属の小さい順に並べていきます。次にすべての負債の最低支払金額のみを払います。そして残りの支払いをリストの一番上の負債に当てます。
最も少ない負債なのでかなり早く返済でき、線を引いてリストから消します。負債がひとつなくなるたにに最低支払金額が減るので、次の負債に当てられる資金が増えるので「雪だるま式返済法」というわけです。
この方法に賛否両論があるのは、利息が一切考慮されていないからです。
ローン返済は利息の高いほうから払うのが原則のはず。
考案者の個人ファイナンスの達人、デイヴ・ラムジーはこう説明します。
計算は確かに重要だが、ときには計算よりもやる気のほうが大事だということを学んだ。それが現実なのだ。考えてみてほしい。ダイエットに挑戦して、一週間目に体重が落ちたら、ダイエットを続けようと思うだろう。しかし、ダイエットに挑戦して体重が増えたり、六週間たっても目に見える効果がなかったりしたら、あきらめてしまう。
<中略>
雪だるま式返済法を始めて数日で債務をいくつか返済すれば、確実にやる気がわくのだ。心理学の修士号を持っていようが関係ない。やる気を燃やすには、小さな成功が必要だ。そして、やる気を燃やすことが何よりも重要なのだ。
最もやる気を奪うのは「自分でコントロールできない」という無力感です。
どんなに小さな成功でも成功すればやる気がでます。
「きちんと家を整える」ではなく「とりあえず5分掃除しよう」。
そんな小さな成功を積み重ねていきたいものです。