翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

本当の人生を始めるために、目の前のやるべきことをやる

ほぼリタイア状態になりつつあるので、自己啓発本はもう読まなくていいのに、つい手が出てしまいます。もう効率的に時間を使ったり、大きな目標を追い求めることもないのに。

 

『限りある時間の使い方』。

 

「限りある時間」とタイトルにあるので、時間を無駄にせず効率的に生きる方法が書いてあるのかと思ったら、正反対でした。すべてのことを終わらせるなんて絶対にできないから、有限性を受け入れろという教えです。「完璧に効率化された自分が、ついに人生で本当にやるべきことを始めるなんて日は、決してやって来ない」と断言しています。

 

これまでの人生の大半を大半の時間を「本当の人生はまだ始まっていない」と感じながら過ごしてきました。「高校に入ったら」「大学に入ったら」「就職したら」「結婚したら」など。

 

自分の生まれてきた意味はつねに地平線の先にあり、そこにたどり着いてからが本当の人生であるような感覚。それまでは本当の人生を生きていない。とりあえずあれこれやってはいるけれど、それはまだ仮のものであって、いつの日か本物がやってくるはずだ。

 

仕事はほぼ引退しつつあり、好きなことができる本当の人生が始まるはずなのに、目下のところ「スペインの巡礼を終えたら」と考えていることに気が付きました。いくら巡礼したところで、自分の本質は変わらないだろうとうすうすわかっているのに、人生を根本から変えるドラマチックな体験を夢見ているのです。

 

じゃあどうすればいいのか、本の最後に書いてありました。「どう生きるべきか」という問いへのユングの返事です。

 

ただ、静かに目の前のやるべきことをやりなさい。

次にすべきこと、もっとも必要なことを確信を持って実行すれば、それはいつでも意味のあることであり、運命に意図された行動なのです。

 

次にやるべきことをしよう(Do the next right thing)という言葉は、アルコール依存で先の見えない人たちが、なんとか前に進むためのスローガンにもなっているそうです(耳が痛い)。

壮大な目標とか、人生の意義がわからなくても、次にやるべきこと(皿を洗う、洗濯物を干す、人に親切にする…)をやっているうちに一生が終われば、それが正しい生き方。

夜はお酒ばかり飲んでいないで、スポーツクラブに行って踊り、心を満たす読書やドラマ鑑賞を。そして「明日から本気出す」ではなく、何時からだってやり直しがきくと考えること。午前中はグダグダでも午後からうまくいく日だってあるのです。

 

熊野古道の中辺路。歩き始める前は「スペイン巡礼の予行演習」など余計なことを考えていたのですが、途中からとにかく次の押印所を目指すようになり、気が付いたら一日10時間歩いていました。