英国人ジャーナリスト、オリバー・バークマンの著作がおもしろくて、次々と読んでいます。
『限りある時間の使い方』は目の覚めるような発見に満ちていました。そして『ネガティブ思考こそ最高のスキル』は哲学や仏教の教えを現代風に噛み砕いています。
原題"amtidote"は解毒剤。副題に"Happiness for peope who can't stand positive thinking"とあり、自己啓発書の説くポジティブ思考に疲れた人々に平安をもたらす書といったところでしょうか。
この数十年間、仕事中心の日々を送ってきた私は、リタイア後の生活にうまく適応できていません。締切や目標、ゴールのない状態に慣れていないのです。
何もしないでぬくぬくと暮らしている罪悪感をやわらげてくれたのが、この本の「目標は危ない」という章。明確なゴールを設定し、人生をコントロールしようとするのは苦しいだけ。生き方は苦しいだけ。不確実な状態に耐える力、あるいは不確実」という
スティーヴ・シャピロというアメリカ人のビジネスコンサルタントが登場します。かつては「ゴール中毒」の重症患者で、目標をたっせするために狂気じみた日々を送っていました。
彼が変わるきっかけとなったのは、ある友人との会話。
「あなたは、将来について多くのことを考え、エネルギーを使い過ぎている」と指摘し、自分を蛙のように思うようアドバイスしたのです。
睡蓮の葉の上で飽きるまで日向ぼっこをしなさい。退屈したら、別の睡蓮の葉に移り、しばらくそこで時間を過ごしなさい。これを、何度も何度も繰り返して、気の向く方向に動き回りなさい。
成果を求めて突き進み、喜びを味わうのを計画達成まで先延ばしするのではなく、今現在を楽しむ姿を象徴するのが蛙です。
蛙と睡蓮のイメージが頭の中に広がりました。
旅に出るのは、睡蓮の葉を移動するため。日常生活でも、スポーツクラブのダンススタジオや八百屋さんの店先がそれぞれ睡蓮の葉なんだと思うことにしました。どの葉の上でもリラックスして、その瞬間を楽しみたいものです。