翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

宿坊の聖なる仕事

この夏、フィンランドから遊びに来る予定の友人。「京都か奈良で宿坊に滞在したい」とメールが来たので「東京にも宿坊がある」と返信しました。

しかし、泊まった経験がないので、お勧めの宿坊を紹介できません。そこで青梅の御岳山に行くことにしました。日帰りできるところに泊まってみるのも、気楽でおもしろい体験です。

 

同じ東京都でも、西に行くと豊かな自然が残っています。都心ではすでに散った桜がまだ咲いていました。中央線には半袖の人もいましたが、山の上は少し肌寒く、ジャケットをはおりました。

 

武蔵御嶽神社にお参り。もっと早く来るべきでした! 占い師ならぜひ参拝したほうがいい神社。というのも、鹿の骨を火であぶってその年の農作物の収穫を占うという「太占祭」を行っているからです。日本でこの儀式を行うのは、武蔵御嶽神社と群馬の貫前神社だけだそうです。

外国人観光客もいましたが、それよりも目立ったのが犬を連れた参拝者。山奥で道に迷った日本武尊ヤマトタケルノミコト)を狼が導いた伝説により、眷属である犬を祀っています。愛犬の祈祷も受け付けていますし、ケーブルカーには犬連れの乗客用のスペースも設けられていました。

 

泊まったのは憩山荘という宿。一人泊を快く受け入れているようだったので。平日だったのでこの日の客は私だけでした。怠け者の私は、予約がなければのんびり休めただろうに、気の毒だと身の縮む思いでした。

ネットの口コミでは女将さんが親切で、食事がおいしいと圧倒的に高評価です。

春の食材を使って丁寧に作られた皿が並び、鮎は焼き立てを持ってきてくださいました。

 

御岳の観光案内のページでは宿坊となっていましたが、特に宗教行事があるわけではありません。聞いてみると、このあたりの家はみんな神社の関係者。近年は観光で訪れる人も多くなってけれど、もともとは参拝客を迎えるための宿という位置付けだったそうです。

なるほど。ご主人も女将さんも、宿泊業というより神職のような雰囲気なのはそのためか。古い建物ですが、すみずみまで掃除が行き届いているのも、修行者のように心を込めて掃除をしているからでしょう。

女将さんの料理がすばらしいので、どこかで修業したのかと思ったら、お嫁入りしてから覚えていったとのこと。下界から離れ、部屋を整え料理を作り、宿泊客を迎える日々。仕事にかまけて家事はおざなりで済ませてきた私の人生と何という違いでしょうか。

 

翌朝、チェックアウトして再び武蔵御嶽神社へ。階段が多いのでけっこうな運動になります。

お参りを済ませて参道を歩いていると、土産物屋さんのご主人が掃き掃除をしています。

「おはようございます」と声がかかりました。

「参拝されましたか?」と聞かれたのは、午前9時過ぎに下り道を歩いているので、早朝に山歩きだけして帰る不信心な旅行者と思われたからかもしれません。

「はい、昨日はここで一泊しましたので」と答えると、「それはよかった、いいところでしょう」。

 

この地に住む人全員が、神社の参拝者をもてなし、それを生きがいと感じているのが伝わってきました。

 

ラム・ダスの『ビー・ヒア・ナウ』の一節。

Make It Sacred 聖なる行為

This (chopping wood and carrying water) is Karuma Yoga...The Yoga of daily life.

The way to do it is, do what you do but dedicate the fruits of the work to Me.

この薪割りと水くみこそが、カルマ・ヨガ(日常生活のヨガ)です。

そのやり方は、何をやろうとも、その仕事の実りをわたしに捧げるというものです。

 

御岳は神社だけでなく、地域全体が聖域です。東京都内にこんな場所があるなんて、すばらしい。来週、また行くことになりました。