「サウナを愛でたい」、最も熱心に観ているテレビ番組です。
山梨を紹介するシリーズで都留(つる)のサウナに心惹かれて行ってみることにしました。中央線沿線の住民にとって、新宿から特急が出ている山梨はとても行きやすいのです。
目指すは都留の「スターらんど」。
特急「かいじ」で旅気分を満喫し、大月で下車。富士急行の河口湖行きに乗り換え。外国人に人気の路線で、大月駅では英語や韓国語が飛び交っています。桜のシーズンには大にぎわいでしょう。
赤坂駅で下車。東京より気温はやや低めで、空気が澄んで富士山がぐっと近い。
徒歩で宿に向かう途中、かきあげうどんの昼食。
山梨名物、吉田のうどんです。めんはコシが強く、珍しいのはキャベツが入っているところ。かき揚げは揚げたてです。
地元では人気のお店のようですが、店の入口には閉店のお知らせが貼ってありました。
少し遅めのランチタイムで、先客は二組。
高齢のご夫婦が食べ終わって、ご主人が客席の隅に座っているお店の主のような女性に話しかけています。どちらも90代手前の同年齢のようです。
店を切り盛りしているのは、お店の主の娘さんらしき人。お勘定を済ませ、手が空いているようなので「こんなにおいしいのに、どうしてやめちゃうんですか?」と聞いてみました。
「私はね、会社にお勤めしていたら、もう定年を迎える年齢なんですよ」
おお、私とほぼ同年齢です。
「コロナがやっぱり大変でした。そして、母の介護がありますから」
そういうやりとりを、お母さんはにこにこしながら聞いています。お店のことが大好きで、働けないけど店の隅に座って店内のようすを眺めているのでしょう。「お元気そうなのに」と返すと、通院の付き添いが大変だとのこと。
ああ、そうでした。病院に連れて行って、受付をして診療科の前で待ち、お医者さんの質問に答えて説明を聞き、会計を済ませて次回の予約を確認する。処方箋を薬局に持って行って薬をもらう。高齢者の通院付き添いは大仕事です。
パソコンに向かっているだけの楽な仕事をしている私でさえ引退を考えているのですから、厨房での立ち仕事もつらくなるのもわかります。
かきあげうどんは500円でした。小麦粉や食用油が高騰しても地元密着のお店だからやすやすと値上げするわけにはいかないのでしょう。
お父さんが24年前に開業した店ということで、四半世紀も営業していれば常連さんも高齢化します。90代手前のお客さん夫婦は車で来ていて、「事故でも起こったら大変だから」と駐車場まで見送っていました。店を開けていれば車で来店を続けるでしょう。そういうこともあって閉店を決めたのかと想像しました。
東京からそう遠くはないのですが、各駅の富士急線は1時間に1本。若者は便利な都会に出て行くのなら、商売の見通しも明るくありません。
こういった閉店は日本各地で起こっているのでしょう。日本の縮図を見るかのような体験でした。