コロナ以前、JALの上級会員ステータス獲得のためにいわゆる「マイル修行」をしました。搭乗回数が一気に稼げる沖縄の島々を巡るアイランド・ホッピング・ツアーにも参加。その時知り合った女性、もともとは鉄子で「日本の駅をすべて制覇する」という計画を立て、全国の路線に乗ったという話を聞きました。陸を制したので次は空というわけで、全国の空港制覇を目指しているそうです。
そういう野望を私も持ちたい。ということで思いついたのが、全国47都道府県の県庁や市役所の食堂巡りです。
一人旅の場合、食事をする場所の選定に迷います。一人でも気軽に入れるチェーン店は便利ですが味気ない。かといって地元の方々で混んでいる店におひとり様で入るのも気が引けます。そこで県庁や市役所の食堂で「一般人もOK」というところにお昼の混雑時をはずして入ってみることにしました。
「観光」の語源は「国の光を見る」。出典は易経「風地観」です。
よき為政者の国は明るい光に満ちています。光の状態を見れば、その国がどう統治されているかわかるという意味です。
入札により民間業者に委託される官公庁の食堂。官と民の関係がうまくいっていれば、おいしくてサービスもよく、メニューに工夫もあるはず。食堂の状態から、その地の行政の一端を垣間見ようという計画です。
第一回目は先日の沖縄。県庁の地下に食堂があったのですが、2020年8月で閉店。コロナの影響で来店客が減少したためとあります。
ということで、那覇市役所へ。住民でもないのに足を踏み入れるのは新鮮な体験です。
あちこちにこんなポスターが貼られていました。
「生活保護の申請は国民の権利です。ためらわずにご相談ください」
観光が主要な産業の一つである沖縄経済にコロナが与えた影響は計り知れなく大きかったのでしょう。
市役所の2階の奥に食堂はありました。2時近くになっていたので、お客はまばらです。
ゆし豆腐定食は400円。最初、ご飯はこの3倍の量で出され、とても食べきれないからと3分の1に減らしてもらいました。
近くの席で食事中だった女性が、バッグから食品用ラップを取り出し、食べ残した料理を包み始めました。そして、新たな入店客に付き添って来たのは市職員でしょうか、「もう閉店が近いから、たくさん食べさせてあげて」と食堂の人に声をかけています。
生活に困窮した人が市役所に相談に来て、ともかくお腹いっぱい食べることができる食堂なのかもしれません。ピークを過ぎた時間だからか、食堂の人は注文の勝手がわからない旅行者にも優しく接してくれて、沖縄の国の光を観たような気がしました。