翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

『スマホ脳』を実感した瞬間

ベストセラー『スマホ脳』を読んで、「なるほど!」と思うことがたくさんありました。

満足に食べることができず、病気や怪我、猛獣に襲われる危険があり、人口の半数が10歳前に亡くなっていた原始社会。現代人はそんな過酷な状況を生き残った人間の遺伝子を受け継いでいます。

 

私の父方は長寿の家系です。適正な体重維持のために気を付けている私は、血縁者と会うたびに「私はあんな自堕落なデブとは違う意識の高い人間だ」と思い上がってきました。親戚たちは単に太っているだけでなく、金銭への執着も並外れています。

 

しかし、デブで欲張りだから家系が続いているのです。

スマホ脳』には10万年前のサバンナに生きるカーリンとマリアの二人の女性のたとえ話があります。

カーリンは高カロリーの甘い果実が実る木を見つけ、1個だけ食べて満足して去ります。翌日、またお腹が空いて木のところに来ますが、もう実はありません。

一方、マリアは食べられる限界まで腹に詰め込みます。翌日も木に行きましたが果実は何者かに取られています。残念だけど、前日のカロリーが体内に残っています。人口の15~20%が飢餓で亡くなっている時代はマリアの選択が正しいのです。

 

カーリンとマリアが現代社会にワープしたらどうでしょうか。

カーリンはマクドナルドでハンバーガーを1個食べて満腹になり、機嫌よく店を出ますが、マリアはハンバーガーとフライドポテト、コカ・コーラにアイスクリームも注文。翌日もマリアは同じ注文を繰り返します。数か月後、マリアは余分な体重が何キロも増え、2型糖尿病を発症。

サバンナでは生き延びるのを助けてくれたカロリー欲求だが、現代社会には適していない。人類の歴史の99・9%の期間、私たちの生活を維持してきた生物的なメカニズムが、突如として益よりも害を引き起こすようになったのだ。

 

現代人がネット中毒になっている理由も『スマホ脳』で解き明かされています。

食料が得られるかどうかわからなかった時代、生き延びるのはあきらめずにあらゆる場所を探った人。お金を失う確率のほうが高いのに、現代人がギャンブル依存になるのはこのためです。

危険だらけの世界では、集中を分散させ外敵に素早く反応しなくてはいけません。しょっちゅうスマホをチェックする現代人は、原始時代だったらうまく猛獣から逃げていたのです。

そして、50~150人の集団で暮らしていた時代は、誰が信用でき、誰と距離をとったほうがよいか正しく判断することが生存率に直結していました。なにしろ人口の1~2割は殺人によって命を落としていたのですから。現代人のSNS中毒はこれで説明できます。

 

先日読んだ『ライフシフト』では人生100年時代の新しい生き方を提唱していました。

昭和22年(1947)年の平均寿命は男性が50・06歳、女性が53・96歳。50年ほどで倍も寿命が延びたのですから、いくらなんでも原始人の脳も少しは進化しているはずです。少なくとも私は、極端に太ってないし、ギャンブルには手を出さないし、SNSもあまりチェックしません。ゲームとアルコールにのめり込むことはありますが…。

 

先日、錦糸町に泊まり、翌朝はよく晴れていたのでスカイツリーに昇ってみました。

展望デッキに透明なガラス床があり、地上340メートルから真下の地上を見渡せます。窓から富士山や東京湾を眺めるのは何ともなかったのですが、ガラス床に立つと心臓の鼓動が早くなるのを感じました。

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係の人は「床と同じ強度です」と説明してくれるのですが、足を乗せるのがやっとで、飛び跳ねるなんてとてもできません。理性ではわかっていても、原始人の脳がに危険信号を発しているのです。

なるほど『スマホ脳』に書いてあることは正しかったんだと実感できた瞬間でした。

 

高齢になるにつれ代謝は落ちる一方ですから肥満にはより一層の注意が必要。もっと心配なのが人間関係への依存。寂しい年寄りは簡単にだまされたりするのでしょう。「もう十分生きたから、未来のある若い人に道を譲ろう」という謙虚な姿勢で生きれば、過食やギャンブル、人間関係への依存を抑えられるのかもしれません。