橘玲の本を続けて読みました。
まずベストセラーとなっている『無理ゲー社会』。
昭和の時代は息苦しいことも多かったけれど、貧しい家に生まれても逆転できる可能性がありました。時代は進んだはずなのに、日本は若者が無理ゲーと嘆く国になってしまったようです。
親ガチャという言葉は親子関係を冒涜するから使うべきではないという意見もありますが、実家の経済状態だけでなく、遺伝子によって能力もある程度決まると書かれています。努力は裏切らないとか、努力は必ず報われるといった励ましは安易に口にしないほうがいいでしょう。優秀な遺伝子を持っていない人にとっては呪いの言葉になります。
クリアできないのが無理ゲーのはずなのに攻略法がある? そうした疑問から手に取ったのが同じ著者による『人生は攻略できる』。中高生から若い社会人に向け、現代を生きるための攻略法を著作の数々からまとめています。
無理ゲーを攻略できるかどうかの分かれ道は、それを教えてくれる人や書物に出会えるかどうか。
そして、お金持ちの家に生まれれば万事OKかと言えばそうでもなさそうです。
「あなたはどれくらい幸福ですか」と質問して答えをまとめたアメリカの研究。
最も幸福度が低かったのは、生まれたときから貧しくてずっと貧しい人。これは想像できます。意外なのは、次に幸福度が低い層。生まれた時からお金持ち。そのあともずっとお金持ちの人。え、どうして? 銀のスプーンをくわえて生まれるのは、現世で最高の幸運のはずなのに。
そして、幸福度が高かったのは、貧しい家に生まれ、自分の力で成功した人。
ロールプレイングのたとえでしっくりきました。
人生をロールプレイングゲームだとすると、最初がレベル1で、どんなに頑張ってもレベル1から変わらなければぜんぜん面白くないだろう。でも最初からレベル100で、おまけにモンスターも出てこなくて、どんどん進んでいったらクリアできるゲームはどうだろう。同じくらいつまらないのではないだろうか。
私の人生を振り返ると、とりあえず行きたい大学に進学でき、就職も結婚も自分の思う通りにできたことは大幸運でした。
うちの両親は子供にお金を与え過ぎるとろくなことがないと考えていたらしく、大学の学費と生活費は出してくれましたが、やりたいことがあるなら自分で稼げという教育方針。このおかげで学生時代は多種多様なアルバイトで経験値を上げ、卒業後に飛び込んだ広告や出版業界はたまたま時代の追い風があり、ゴールドも稼げました。
ドラゴンクエストには戦士、武闘家、魔法使い、僧侶、遊び人などの職業があります。まずここで自分に適したものを選ぶのが大きなポイント。戦士と武闘家では戦い方が異なるし、魔法使い回復系の白か攻撃系の黒があります。私は公務員とか専業主婦を選んでいたら、たちまちゲームオーバーになるところでした。
徐々にレベルアップできたロールプレイングゲームだったと振り返ることができますが、不運な要素が重なってゲームを攻略できなかった人にはセーフティネットのある社会であってほしいと思います。
大宮のおふろカフェ。フィンランドサウナの世界を再現しています。コロナが収まってきたら行きたい場所の一つです。
ゲームの攻略なんて考えず、ただ生きているだけのムーミン谷は理想郷ですが、人間の世界はそうはいきません。