40代半ばまでは、売文業が超多忙でブログを書くなんて思いもよりませんでした。書けば書くほど出版社から原稿料が振り込まれていたので。
ただし、フリーランスのライター業は、いつまでも続けられるものではないと先輩から聞かされてきました。編集者は年上のライターに発注することを嫌います。懇意にしていた編集者も定年を迎えました。
ライターの上りは、編集プロダクションの経営者になって上前をはねることだとも聞いていましたが、そんな面倒なことは向いていません。結局、東洋占術とビジネス翻訳という専門を掲げて細々とでも書き続けています。
本業が暇になるにつれて、ブログを書くようになりました。読者や編集者を想定せず、書きたいことを気ままに書けるのは本当に楽しい。しかも、思考の整理に役立ちます。自分は文章化することによって考えをまとめるタイプだと、村上春樹の『猫を棄てる』を読んで実感しました。
村上春樹の父は大陸での悲惨な戦争体験を経て京大文学部に進学した向学心あふれる青年でした。そうした父の一人息子として育ち、全面的に対立したわけではないけれど、父の期待に沿えないという居心地の悪さを感じていました。
父の死後、この本を書くことで、気持ちが一段落したようです。
僕は手を動かして、実際に文章を書くことを通してしかものを考えることのできない人間なので(抽象的に観念的に施策することが生来不得手だ)、こうして記憶を辿り、過去を眺望し、それを目に見える言葉に、声に出して読める文章に置き換えていく必要がある。そうしてこうした文章を書けば書くほど、それを読み返せば読み返すほど、自分自身が透明になっていくような、不思議な感覚に襲われることになる。
本業は先細り、副業の日本語教師もすっぱりやめて、自由に使える時間が増えました。読みたかった本を好きなだけ読める夢のような生活。
だけど、ただ読むだけでは物足りない。自分の中でどう消化したかをこうして文章にすることで、本の世界にどっぷり浸かることができます。
こうした本の楽しみ方を共有したくて、ウラナイ8ブッククラブも始めました。ネット音痴の私では決して実現できなかったのですが、ウラナイ8の仲間のユミコさんに相談して掲示板への書き込みを始め、玉紀さんがメンバー登録と告知を担当してくれました。
アメリカのドラマや小説に出てくるブッククラブにずっとあこがれていました。占いをキーワードにブッククラブをやってみたかったのですが、このご時世ではリアルに集まるのがむずかしいし、期限を決めて特定の本を読了するのも義務感にしばられそう。ネット上なら、場所と時間の制約なく、ゆるく交流できます。そして、本好きなら「話す・聞く」より「書く・読む」を好むはず。
「秘密のバーチャル図書館」(byウラナイ8のまるさん)として、蔵書も徐々に増えてきています。会員の方々が知らない本を紹介してくださると、読みたい本のリストに追加しています。読了後、自分なりの感想を文章にしていきたいと思います。
石垣島の街角で昼寝中の猫。『猫を棄てる』は猫にまつわる象徴的なエピソードもあり、猫好きにはたまらない一冊です。