翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)、ビジネス記事翻訳。副業で外国人に日本語を教えていましたが、2019年3月で卒業。フィンランドが大好き。ウラナイ8所属。

嫌われない年寄りになるために

美容院で、ワクチン接種のコールセンターに高齢者のクレームが殺到してオペレーターが心を病んでいるという話題になりました。ネット予約ができず電話で待たされイライラして、さらに希望の日程で予約が取れないと「俺が死んでもいいのか」とか暴言を吐くそうです。

同世代の美容師さんと「そんな年寄りにならないように気を付けたい」と話しましたが、心構えだけで避けられるものでしょうか。

 

ノマドランド』の映画と原作はアメリカの話とはいえ、いかにして老いるかの教科書です。

お金がなくて家を失うのは悲惨なことだけど、お金さえあれば幸せな老後を送れるわけではありません。これも美容師さんに聞いた話。退職後の高齢男性が自治会長になり、事あるごとに昔の肩書を出して「だから俺の言うことを聞け」と言わんばかり。陰で若い主婦から「昔は偉かったとしても、今はただの無職のジジイ」と言われているそうです。

ノマドランド』の原作に登場する高齢者が魅力的なのは、ジャーナリストのジェシカ・ブルーダーを受け入れて、自分の失敗談もユーモラスに話せる心のゆとりがあるから。そして、ハウスレスであってもホームレスではない、人のためにちょっとした手助けができるというプライド。こういう自己肯定感がないと、過酷なノマド生活を続けられないでしょう。

 

映画にも登場するボブ・ウェイルズは車上生活の先駆者としてウェブサイトで情報発信を続け、RTR(ラバートランプ集会)という交流の場も立ち上げました。無料の各種セミナー、不要品交換会を通して自分の技術や所持品を同じ立場の人々と共有するのです。機械に詳しい人は自動車修理の基本を教え、大工仕事が得意な人は、トラックの荷台にベッドフレームや棚を取り付けます。美容師免許を持っている人は、人気の寄付ベースでヘアカットを提供し、ろうあの女性は即興でアメリカ手話の講習会を開くといった具合。

 車上生活をしている仲間のひとり、リサ・ネスミスは毎朝日の出とともに起き出し、朝一番にキャンプファイヤーの火をおこす。その火にポットをかけてカウボーイコーヒーを淹れ、カップを持ってやってくる人にふるまう。これはリサがバージニア州リッチモンドの高層マンションに住んでいた頃からの、長年の習慣だ。日曜日は早起きしてコーヒーメーカーでコーヒーを淹れ、玄関のドアを開け放して近所の人に知らせたものだという。コーヒーの用意ができました。どなたでもどうぞ、と。

 

月一回、献血ルームでタロットカード占いのボランティアをしています。

献血が趣味という人もいて、全血献血は男性は年3回、女性は年2回しかできないけれど、成分献血なら一年に24回までできると教えてもらいました。「献血すると世の中の役に立てたと、自己肯定感が上がるんです」とのこと。それは私も同じ。血液を提供してくれた方々と対面してカードを読む時間はかけがえのないものになっています。

 

歳を重ねるにつれて能力は衰える一方ですが、「高齢者だから優先しろ」という年寄りではなく、人のために何かしたいという気持ちを持ち続けたいものです。

 

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スペインの街角のバル。観光客向けではないこうした店で人間観察をするのが好き。近所の常連の高齢者たちはとても大切にされていました。国家財政は厳しくても老人にはやさしい国だという印象を持ちましたが、コロナ後はどうなっているのでしょうか。