おめでたいはずの新年ですが、年齢を重ねると「あと何回、お正月を迎えるのだろう」と不吉なことを考えてしまいます。
そして、残された時間が長くないからこそ、心穏やかに生きたいものだと願います。
昨年、自宅のリフォーム工事のため家を空け、別府に滞在しました。ディープな鉄輪に二泊、別府北浜の亀の井ホテルに二泊。サウナ、水風呂を完備してビジネスホテル的な使い方もできる亀の井ホテルは、とても気に入っている宿です。
3時のチェックイン時間ちょうどのフロントは混雑していました。高齢女性がなにやらもめている模様。3人グループの代表として手続き中、全員の住所氏名名を書かなくてはいけないと言われ、「予約時に書いてあるのに」と主張しています。ホテル側としては、実際の宿泊者の確認として署名が必要。後ろのソファで待っているお二人をわざわざ呼ぶのも面倒で、嫌みも言いたくなるのでしょう。
その後、3階の大浴場のエレベーターに乗り込もうとしたら、女性のグループが近づいてきました。「開」ボタンを押してを待っていると「すみません」「お先に行ってもらってもよかったのに」と女性たち。「このホテル、エレベーターが遅いから乗ったほうがいいですよ」と返し、フロントであった高齢女性の3人組だと気が付きました。
温泉に入ってリラックスしたのか、リーダー格の女性はさっきとは別人のような穏やかな表情。「晴れているから部屋からの眺めもいいですね」など、世間話も弾みました。
人の性格は固定されたものではありません。強制収容所で残忍の限りを尽くしたナチ党員が家庭では善き夫であり父だったという例は極端ですが、AさんはBさんにとって悪い人でも、Cさんにとっていい人ということはよくあります。
だったら、機嫌よくにこにこしている老婆にはなるためには、そうなれる状況を選ぶようにすればいい。そして、いやな性格になりそうな状況はできるだけ避けること。
現在、私が最高に「いい人」と思われている状況は、献血ルームです。
ボランティアで占いをやっています。月1回、午後1時から5時まで。15分前ぐらいに受付を閉め切り、それ以降は予約表に書き込めないようにしているのですが、ある日「どうしても」という献血者がいました。私ではなく日赤のスタッフに申し出たので、「先生、どうしましょうか」と困った顔で相談されました。その日は6時からズンバのレッスンに出る予定だったのですが、「断ったら、これまで1年以上演じてきた『人格者の占い師』というイメージが崩れる」という下心から引き受けました。
本来、占いは無料で行うものではありません。占い講座では、人間が知りえない天の秘密を漏らすことだから、鑑定料を払ってもらわないと、客と占い師の双方に災いが降りかかると聞きました。
そして、鑑定を職業としている占い師にとって、無料占いは迷惑でしかないでしょう。昨年、ネットで目にした話。「無償で包丁砥ぎをする中学生」は美談でしょうか?
コロナ前には、献血ルームにはマッサージやネイルのボランティアもいたそうです。占い師と同じく、本来なら有償のサービスです。
ただ、献血だけは特例で許してもらえると考えています。400ml献血は期間をあけないとできませんし、そもそも昔は有償だった血液を無償で集めているのですから、献血者にはちょっとしたサービスが提供されてもいいのではないでしょうか。
本格的に鑑定を始める前に、腕試しのためにボランティアで占ってみるというケースもあるでしょう。私は専門の東洋系ではなくタロットカードを使っています。
先月、ウラナイ8の夏瀬杏子さんが主催したタロット練習会でシェイクスピアのタロットを使ってみました。シェイクスピアの戯曲やソネット、登場人物をカードにしているのですが、マイナーな戯曲の解釈に自信が持てません。練習してみる絶好の機会でした。
大アルカナの「月」はマクベスの『3人の魔女』。
”fair is foul, and foul is fair (きれいはきたない、きたないはきれい)”
別府で会った3人の女性は頑迷ないじわる婆さんであり、やさしく知恵のあるおばあさん。マクベスは魔女の予言によって謀反を起こしたようであり、謀反のために魔女の予言を利用したとも言えます。