年の終わりが近づくと、来年の六十干支(かんし)について考えます。
占いなんて興味ないという方は、「今年は酉年、来年は戌年」と十二支しか意識していないでしょうが、東洋占術をかじると、同じ戌年でも、上に何が乗っているかが気になります。
十二支の上に乗る干(かん)は、甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の10種類。
10と12の最小公倍数は60ですから、十干と十二支で六十干支となります。甲子(きのえね)から始まって癸亥(みずのとい)まで一巡りすると60年です。
自分の生まれた年と同じ六十干支が巡ってきたら、還暦。暦を一通り生きて、赤子として生き直すから赤いちゃんちゃんこを着たりします。昔は還暦を過ぎて生きる人は多くなかったから、「この前の丙午(ひのえうま)の年…」というだけでどの年かわかり、60年分の年の呼び名があればそれで十分だったのでしょう。
そう、六十干支で最も有名なのが丙午。この年に女の子が生まれるのを恐れて、1966年は出生率が落ちました。次の丙午年は2026年。もう丙午なんてあまり気にしなくなっているか、それとも、出生率が下がりすぎて影響も少なくなっているかもしれません。
来年は戊戌(つちのえいぬ)年。「戊」と「戌」はよく似た漢字ですから、占い学校で四柱推命の講座を受け始めた頃は混乱したものです。
十干と十二支は木火土金水の五行に分類され、戊も戌も「土」に属します。
2017年は丁酉(ひのととり)で丁が「火」、酉が「金」。火が金を尅す(攻撃する)ので、なかなか落ち着かない一年でした。
では戊戌は土同士で落ち着くかというと、そうでもなさそうです。
戊は自然界では山。山だからどっしり構えているかのようでいて、安岡正篤は「戊は『茂』に通じ、枝葉が茂り事態の末梢的紛糾を示す」と説いています。
そして、そんなざわざわした山の下に戌(いぬ)。
戌は土であると同時に、「火」の性質も併せ持っています。十二支の寅・午・戌が三合火局を作ります。季節で言えば、寅は春先、午は夏至、戌は晩秋。「火」の気は寅で生まれ、午で最高潮に達し、戌で終焉を迎えます。物事は終わるときにごたごたしがち。ろうそくも燃え尽きる直前に炎がひときわ大きくなります。戌が一暴れすれば、戊戌は火山と化する可能性も。勃発的なできごとが各地で起こるでしょう。
今年、丁酉の年は株価だけ見ればかなり景気がいいのですが、社会全体の実感としては好景気というわけでもなさそうです。
戊戌の年も、戌の火の成分から、とりあえず株価は維持しても、かなり危うい状況です。というのも、2年後の2020年、庚子(かのえね)が巡ってくるからです。
五行では庚は金、子は水。五行の関係では金生水(きんしょうみず)で、水の力が強くなります。五行では火は陽で拡大、水は陰で縮小ですから、陰が強い年は景気も悪くなりがちです。
庚子(かのえね)の年に東京オリンピックというのが、私にはとんでもない悪手に思えます。日本にはそんなお祭り騒ぎをやる余裕なんてないのに、莫大な国家予算をつぎ込むなんて…。
前回の東京オリンピックが開催された1964年は甲辰(きのえたつ)の年。陽の木である甲に、初夏へと向かう辰の組み合わせで、オリンピックは日本の経済成長の起爆剤となりました。
2018年の60年前の1958年は、日本は成長段階でしたから、同じ戊戌(つちのえいぬ)が巡ってきても、かなりのポテンシャルがありました。
明仁皇太子と正田美智子さんの婚約発表があったのが1958年。東京タワーが完工し、日本初の缶ビール(アサヒビール)やバレンタインチョコレートが発売されました。当時の人は日本の確実な変化を感じたでしょうが、2018年は別の意味での変化を実感する年となるでしょう。
もう経済大国ではないし、高齢者ばかりの国になるのだから、身の丈にあった経済政策に舵を切ってほしいものですが、オリンピック前の高揚した気分にかき消されそうです。投資で含み益があるのなら、利益確定をしておいたほうがいいでしょう。2020年のオリンピック閉幕後、厳しい現実に向き合うことになりますから。
那覇の中国式庭園・福州園には十二支の像があります。