オリンピックも終わり、プロ野球も終盤戦。スポーツ観戦の楽しみは来年春の開幕までおあずけです。
若い時期に人生のピークを迎えるスポーツ選手は、その後の長い人生をどう過ごすのかがむずかしい。
でも、一般人にしても、人生の折り返し地点を過ぎると、失われていくものばかりです。
「こんな仕事量はすぐこなせたのに」「人の名前もすぐ憶えられたのに」…
50代半ばにして日本語教師という新しい仕事を始めた私は、負け戦とわかって参戦しているようなもの。学生に申し訳ないと思いながら、なんとか取り繕って授業を進めています。
負け戦…losing battle。
Lの発音が苦手な私にとってはとても印象的な英語です。
ザ・バンドのリック・ダンコが切々と歌い上げる"It makes no difference(同じことさ)"に出てきます。
恋人に去られてもうどうしようもない(Since you've gone, it's a losing battle)という情けない歌なのですが、リックの甘い歌声で聞くといつもうっとりします。
若い頃じゃなくて、年を取るにつれて、味わいが増す曲です。リックがもうこの世にいないのだと思うと、ますますせつなくなります。
しかし、負け戦だからといって、撤退ばかりしていいのか。
ディラン先生は違います。
"Idiot wind(愚かな風)"はディラン先生が占い師のところに駆け込んだり、易を立てたりするのですが、こんな一節があります。
In the final end he won the wars
After losin’every battle
連戦連敗のあとで
彼は戦いに勝った
負け戦でも、たまには勝つこともある。
そもそも、人生はすべて負け戦のようなものなんだから、負けたからといって気に病まず、たまに勝ったらそれでよしとしようと思いました。