NHKの「音楽音泉」という番組を観ていたら、「やる気がアップする曲」として、ボブ・ディランの『ライク・ア・ローリング・ストーン』が流れてきました。
選曲した森山直太朗は、「観客からのブーイングの中、この曲を演奏するシーンに感動した」みたいなことを話していました。
ブーイングされたのは、フォークからロックに鞍替えした直後だったから。ディランを守る騎士のようにバックで演奏するのがザ・バンドです。
イギリスのロイヤル・アルバート・ホールでのライブ版で聴けますし、マーティン・スコセッシ監督の映画『ノー・ディレクション・ホーム』にも収録されています。
たしかにこの曲は、やる気がアップします。
私はスポーツクラブに行く合図のアラーム音の他に、どうしても寝坊できない日の目覚ましにも使います。
ローリングストーン誌のオールタイム・グレイテストソングでは、ストーンズの『サティスファクション』、ジョン・レノンの『イマジン』を抑えて1位になっていますから、世界が認めた名曲です。
初めてこの曲を聴いたのは高校時代ですが、次の3つのフレーズが頭に残りました。
Once upon a time you dressed so fine
(昔はいい服着てたよな)
You've gone to the finest school
(いい学校にも行ったんだろ)
You said you'd never compromise
(妥協なんか絶対しないって言ってたな)
いい服も着たいし、偏差値の高い学校にも入りたい、若さゆえの傲慢さから妥協したくないと思っていた私ですが、この曲を自分へのメッセージとして受け取るには未熟でした。あくまでも歌われているのは高慢で運の悪いミス・ロンリーであり、他人の人生でした。
ミス・ロンリーは、やがて年老いて路上生活者となり、次の食事にどうやってありつくかを算段する毎日となり、ディラン先生にこう問われます。
How does it feel
To be without a home
Like a complete unknown
Like a rolling stone?
(どんな気分だい? 家もなくて、誰にも相手にされず、転がる石みたいになって)
中学時代からの筋金入りディランファンの浦沢直樹氏は『YAWARA!』が爆発的ヒットとなり、リゾートマンションまで買ったところでこの曲を聴き、強い衝撃を受けました。
あそこで「こんなの描いてりゃ一生安泰」ってなってもおかしくなかったんだけど、気づいたんですよ、「まずいわ、いまの自分」って。で、ウワッウワッって二度目の衝撃を感じながら聴いていたら<ライク・ア・ローリング・ストーン>が鳴り出して、一瞬にしてわかったの。ヤツがずっと罵声浴びせてるのが誰なのか。「それは俺だ」って。そこからもう一回、自分の立て直しですよ。
- 作者: 浦沢直樹,和久井光司
- 出版社/メーカー: 小学館
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「ディラン先生が罵声浴びせてるのは私だ」と私が思えるようになったのは、人生の折り返し地点を過ぎたころでしょうか。
ライク・ア・ローリング・ストーンの意味をつかむまでには時間がかかりましたが、ストレートにメッセージを受け取った曲もあります。
恋愛について学んだのは、"Don't Think Twice, It's All Right"
d.hatena.ne.jp
人生の指針は、"Boots Of Spanish Leather"
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引き寄せの法則さえ、ディラン先生が実践法を見せてくれました。
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「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」という人もいますが、私はディラン先生から学んだようなものです。
熱海の寛一・お宮の像をお宮側から撮ってみました。寛一には寛一の、お宮にはお宮の言い分があったはずです。
ディラン先生の"One Too Many Mornings"が浮かびました。
You're right from your side
I'm right from mine
We're both just one too many mornings
An' a thousand miles behind.
(君の側から見れば君が正しい、僕の側からは僕が正しい。僕らは二人ともあまりにも多くの朝と1000マイルを後にしてきた)
多くの朝と100マイルが何を意味するのか悩みますが、恋人同士であっても越えられない隔たりがあると私は解釈しました。