1985年に結婚して36年。半端な年数ですが、1985年は丑年で十二支が3巡しました。結婚後に東洋占術を学んで、子丑天中殺なのに丑年に結婚したことに気付きました。
次の丑年までの12年間は旅行も楽しめるだろうけれど、次の12年はどうでしょうか。日本人の寿命は延びていますが健康寿命となると、男性は72.14歳、女性は74.79歳です。
いつもは「どこかにマイル」で旅をすることが多いのですが、結婚記念日ぐらい行きたいところに行こうと6月の札幌を選びました。ベストシーズンの北海道ですから、ウルトラ先得で春先に予約。6月頃にはコロナも収まっているだろうと楽観的だったのです。
「定山渓商店」と名乗っているのは、肉屋と酒屋が併設されている温泉宿というコンセプトだからです。サウナと水風呂があるので選びました。一泊二食付きのツイン、事前決算で一人1万1000円。夕食は焼き肉、朝食はカレーか雑炊という温泉宿にしては個性的なメニューですが、旅館の料理を食べきれないことが多いのでちょうどいいと思いました。
北海道も緊急事態宣言下で、夕食の席には五組ほど。本来なら6時と8時スタートの二部制ですが、7時も選べました。
レストランのスタッフは一人だけ。テーブルには六段の容器がセットされていて、一番上が前菜、二番目がサラダ、残りが肉です。部位の説明、焼き方のコツ、おすすめのタレは印刷された紙が置かれています。ご飯とスープは自分で取りに行くスタイル。そしてお酒はとなりの酒店のカウンターで注文して自分で運び、チェックアウト時に清算です。酒屋で酒を買うのですから、緊急事態宣言下でも飲めるわけです。
一般の旅館ではテーブルごとに担当者がついて、食事の進み具合をみながら料理を運びお酒の注文を取っていましたが、旅籠屋のスタッフは簡単な説明と焼き肉用に火をつけるだけですからフロアに一人で事足りるのです。
お客さんが少なかったのでチェックアウト時にこの宿についてあれこれ聞いてみました。ビジネス誌の記者をしていたころの癖がつい出ます。
もともとこの建物は札幌市の保養所。部屋はリノベーションしてお風呂はそのまま使っているそうです。オーソドックスな温泉旅館も経営していて、新しいスタイルの宿として誕生。サービスは最小限にしてコストを徹底的に抑えています。
夕食のメニューが一種類だけで、ワ―ケーションで連泊する場合はどうしているのか質問したら、二日目からは朝食のみのプランにして外に食べに行ってOK。メニューを絞っているからこそ、効率的に仕入れができて最上級の食材を提供できると強調していました。
温泉旅館の老舗だから、オペレーションは手慣れたもの。コロナで観光業はどこも大変でしょうが、アフターコロナはこうした企業が伸びるでしょう。
これからの社会に求められている能力は、変化に合わせて仕組みを作ること。
7年前に読んだこの本の一節を思い出しました。「10年後の仕事のカタチ」とありますが、今でも内容は古くなっていません。超高齢化を迎える日本では、高齢者だからといって働かないわけにもいかないだろうから参考にしようと思って読みました。
今後、労働者を分断するのは、「仕組み」をつくる側になれるかどうか。
仕組みを作ってマニュアル化し、人に任せられるようになったら効率は一気に上がります。そして仕組みに従って単純化された作業をこなす人は最低時給で雇われます。
極論は「うまく回る仕組み」をつくるのがうまければうまいほど、出世を重ねて、支配階級になるんです。面白いビジネスの仕組みを考えつく人ってそれなりに沢山いるんです。「根性」とか「長時間働いた」とかっていうのは全然評価されません。評価されるのは「結果」であって、今まで10のリソース使ってやっていた作業が3でできちゃったとか、ミスが劇的に減る仕組みとかが評価されるわけです。
大変な時代になるんだ、この時代に若者じゃなくてよかったというのが正直な感想です。
映画『ノマドランド』で描かれた下層ノマドの話も書かれています。「仕組みをつくりだす側」がハイパーノマドで、アマゾンの配送センターで仕組みに従って必要とされる期間だけ体を動かして働くのが下層ノマドです。
その一方で、最後までなくならないのが「ラスト・ワンマイル・ジョブ」。室内への電気や配管の工事、医療、介護、建設、料理人など絶対に人間が相手をしないとできない仕事です。ただし、ノマドを選ばない人が一気に参入してくるので給料は期待できず、ラスト・ワンマイルという分野で仕組みをつくる側に回れるかどうかが分かれ目です。
そして、感情労働もなくなりません。
そもそも人であることを売りにしたもの。笑顔だったり、共感してくれたり、励ましてくれたり。占いとか、飲み屋のママだったり、こういうのを、感情労働というらしいんですが、要するに、人間に付き合ってもらいたい、人間の感情が欲しいと思うような仕事なんですよね。
出た、占い師!。占い原稿を書くために占い学校で学んだ私が、中華街の占いのお店に座ってみようと思い立ったのも、占い師という職業はなくならないと思ったからです。
そして、定山渓の旅籠屋のような仕組みの宿もあれば、昔ながらの旅館のおもてなしを期待する客相手の、名物女将さんとか中居さんの需要もなくならないでしょう。
結婚記念日旅行だというのに、考えるのはこんなことばかり。
学校を出てからほぼ働きづめで、ここ2年でようやく暇ができてきましたが、完全リタイアはもう少し先のようです。