翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)、ビジネス記事翻訳。副業で外国人に日本語を教えていましたが、2019年3月で卒業。フィンランドが大好き。ウラナイ8所属。

「楽しかった」と言える人生

甲府の珈琲専門店ダンのように忘れがたい旅先の店が旭川の四條食堂。旭川四条駅前にあり、「しじょう」ではなく「よじょう」と読みます。こういう読み方の違いで、よそ者だとばれてしまいます。

 

テレビ東京のドラマ「サ道」の旭川編に登場したお店で、常連から「お母さん」と親しまれる名物おかみが一人で切り盛りしています。

お昼時を外したので、先客が一人。カツカレーを注文しています。「あなた、前回もカレーだった?」「いいえ、他の人が食べているの見て食べたくなって」というやりとりが聞こえます。このお母さんは単に料理を出すのではなく、客との交流を好むタイプのようです。

 

ラーメン通にも聖地とされている店なので、しょうゆラーメンを注文。スープはこってりしていてコクがあります。昔はラードを使っていたけれど、今は使わずに昔と同じ味を再現。「健康によくないものをお客さんに食べさせたくないから」とお母さん。

 

お父さんとお姉さんが経営してた食堂を手伝い始めて、50年近くになると言います。昔は工場や酒造メーカーで働いている人が朝から夜まで食べに来て、お客さんが望むままにお酒も出すようになり、夜は居酒屋みたいになったそうです。お母さんが作るラーメンの力強い味は、額に汗して労働する人が満足するように工夫した結果でしょう。

 

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サウナ界のレジェンド「濡れ頭巾ちゃん」は旭川出身で四條食堂の昔からのお客さん。ドラマ「サ道」にぜひ出てほしいと頼まれたそうです。「濡れ頭巾ちゃん」といっても女の子ではなく、サウナを極めた男性で、「ととのう」という言葉を使い始めた人。湿度の低いサウナで顔が乾燥するのを防ぐのと、情報をシャットアウトして集中するために濡れタオルを頭にかぶります。おしゃれなサウナ―はわざわざ専用のサウナハットを持参しますが、タオルや手ぬぐいで代用できます。

 

四條食堂のお母さんの口癖は「楽しかった」。

家族で食堂を切り盛りして朝から晩まで大勢のお客さんが来ていた頃、ドラマ「サ道」の撮影、芸能人の来店も、すべて「楽しかった」で話が終わります。とにかく人が好きで、人がたくさんいるところが好きで、ジャズも大好き。東京の人はいつでも生の音楽が聴けるからうらやましい、と話は尽きません。

 

上京していたらまた違う華やかな人生が展開していたかもしれませんが、家族から店を受け継いで楽しく働いているのなら、それはそれでとても幸運な人生です。

 

旅の醍醐味の一つはこうした個性的な店を訪れること。

それぞれの場所で、いきいきと働いている人と接して、私も最期に「楽しかった」と言えるような人生を送りたいと思います。