翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

老いのアマチュア

アン・タイラーの小説『結婚のアマチュア』。主人公の夫マイケルは、熟年夫婦になれば結婚のベテランのはずなのに、自分たちはいつまでもアマチュアのままだとボヤきます。

 

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先日、ある書類に書き込んでいたら年齢欄が60歳以上でひと区分になっていました。 昨年末に還暦を迎えた私は90歳や100歳の人と同じグループにカウントされるのです。

まさに老いのアマチュア

できれば老いのプロフェッショナルを目指したい。でも、目指すべきモデルがなかなか見つかりません。ニュースに出てくるのは、高齢者だから優先されて当然だと開き直ったり、ネットはできないとすべて丸投げの老人。コロナで出生数が落ち込み、日本の高齢化はさらにスピードアップし、老人が目の敵にされる世の中が目の前に来ているような気がします。

 

先日の甲府旅行で訪れた珈琲専門店ダンで、高齢者のロールモデルのようなすばらしいマスターにお会いしました。ネットの口コミでは、人柄が絶賛されています。

 

12時になるとランチ客で混むだろうから、11時半に入店。一人なのでカウンター席に座ろうとしたら、「テーブル席でも構いませんよ」と声をかけられました。ネルドリップでコーヒーを淹れながら接客するマスターを観察したかったので「ここがいいんです」とカウンター席を選びました。

 

テーブル席を勧められたのは、先客の老人がいたからかもしれません。

ちょっと危うい感じで、支払いは1円玉や5円玉も混じっているよう。何度も数え間違って時間がかかるのですが、マスターは嫌な顔一つせず対応していました。そして老人が店を出ると、「すみませんね、落ち着かなかったでしょう」。マスターはこうして店全体に目配りしながら甲府の名店に育ててきたのだろうと想像しました。創業1972年とありますから、そろそろ半世紀。もしかしたらリタイアのタイミングも考えているのかもしれません。 

  

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料理担当の女性も感じがよく、BLTサンドイッチも丁寧に作られたのがわかります。

BLTを初めて食べたのは40年前のアメリカ。ハムや卵のサンドイッチしか知らなかった私には衝撃的なおいしさでした。ホームステイ先の家族がレストランに連れて行ってくれてもBLTばかり頼んで「もっと高いものを注文したら」と言われたものですが、私にとってはまさにアメリカの味でした。

 

とりあえず原稿書きと翻訳の仕事は続けているものの、先細りは目に見えています。知力の衰えは感じますが、体力はまだまだあります。できたら下の世代に「あんな風に老いるのもいいかも」と思ってもらえるような仕事がしたい。BLTをかじりながらそんなことを考えました。