調理補助のパートで働いている79歳の女性の記事を興味深く読みました。
配膳と片付けは体力勝負。20代の栄養士とペアを組んで厨房を走り回るため、週6回、カーブスに通っているそうです。まるで日本のルース・ベイダー・ギンズバーグ。
「あなたにとって仕事とは?」という記者の問いに対する答え。
仕事は、自分を人間的に成長させてくれるものですね。感情的にならずに、人の話しも聞いてあげて、いつもスムーズに仕事を進められるようになって……。
79歳にして成長という言葉を口にできるとは!
記事によると、夫婦ともに勤勉に働いてきて、老後の収支にはゆとりがあるようす。働き続けるのは収入より生きがいのため。こんな人は、家でごろごろするだけの毎日ではかえって元気がなくなるでしょう。
私にとっても何歳まで働くかは大きなテーマです。
連載中の週刊誌と月刊誌、季節ものの原稿はずっと続けていますが、出版業界の現状からするといつ休載になってもおかしくありません。ネットの原稿は紙媒体でずっと書いてきた身にはきつい。そもそも雑誌のライターは40歳定年という説があり、たまたま私は東洋占術という専門があったので今まで続けてこられただけです。
超高齢化が進み、70代、へたしたら80代にも働いてもらわないと社会が成り立たないと聞き、日本語教師の資格を取りました。公的な資格ですし、非常勤なら何歳でも働けるし、外国人にボランティアで教えるのもいいかと思ったからです。
資格を取っただけではだめで、実地経験が必要というので3年間、週3回教壇に立ちました。あまりの厳しさに3年で卒業しましたが、続けていたとしても今年の春にコロナで仕事はなくなっていたでしょう。
これからの長い老後を何もせずに過ごすのでは退屈で死んでしまいそう。成長までは望まないにしても、社会とつながるためにも何か仕事を探すことにします。できれば、社会が求めるものと私ができることがパズルのピースのようにぴったり合えばいいのですが。
スペイン・セビリア駅前のバール、カルロス・アルベルト。
地元の人向けの肩ひじ張らないお店。働いている人もお客さんも高齢者の割合が高く、のんびりムード。旅行者の口コミを読むと、「料理が出て来るのが遅い」「注文を間違えられた」とさんざんですが、私にとっては最高に居心地がよく興味深い場所でした。カウンターに座ってビールを飲みながら、ベテランの店員と常連さんたちのやりとりを見ているだけで楽しい時間を過ごせました。地域の高齢者センター的な役割も果たしているのでしょう。
日本より早く没落し、経済もぱっとしないスペインですが、若者は高齢者に優しく接していました。この春、コロナで大きなダメージを受け、再び患者が急増しているスペイン。あの優しい社会は失われてしまうのでしょうか。