人生は習慣によってできています。

習慣の力 The Power of Habit (講談社+α文庫)
- 作者: チャールズ・デュヒッグ,渡会圭子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/02/19
- メディア: 文庫
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第一章に習慣と脳の研究に大いなる貢献をしたユージン・ポーリーというアメリカ人男性が登場します。
ユージンはウィルス性脳炎によって、思考に関わる部位が大きく損傷しました。
日付がわからないし、息子や友人も忘れてしまう。朝ごはんを食べても、また同じことをする。年齢を聞かれると「50か60かな」と答えるけれど、本当は70歳。
これではまともに生活もできませんし、周囲の介護負担はものすごいものでしょう。
しかし、ユージンは社会のお荷物ではなく、神経解剖学の教授がユージンを調べることで人間が複雑な習慣を身に付けるための神経メカニズムを解明するために大きな役割を果たしたのです。
一口に習慣と言っても、それは何十、何百もの細かい作業の積み重ねです。
運転に慣れている人なら、ガレージから車を出すのは何も考えずにできる簡単な習慣ですが、実際に書き出してみると、とんでもなく複雑です。
ガレージを開ける、車のロックを解除する、キーを差し込む・回す、バックミラーとサイドミラーで障害物の確認、ギアを入れて、道路を行きかう車に目を配り、アクセルやブレーキを踏む…。
自分の年齢さえも忘れてしまうユージンが一人で散歩に出るようになり、新しい行動パターンがどのように作られるかが解明されていきます。
本題からはそれますが、私はユージンの生きる姿勢に感銘を受けました。
心臓発作で緊急入院した際、ユージンは寝返りを打てるように胸につけられたモニターを何度もはずします。「センサーをはずさないように」と注意されても、ユージンは注意されたこと自体をすぐに忘れてしまいます。
ユージンの性格を知っている娘はナースに彼をほめるように頼みます。「その装置をつけることで、科学にすごく貢献しているのよ」と。ユージンは機嫌がよくなり、スタッフの頼みを聞くようになりました。
死後、ユージンの脳の画像は数多くの研究所や大学で研究されています。彼の妻はこう語ります。
「自分が科学界に大きな貢献ができたことを、夫は誇りにしたはずです。彼は結婚後すぐ、何か大きなことを、世の中にとって重要なことをいたいと言っていました。それが現実になったのです。ただそのどれも覚えていないというだけです」
頭も体も衰えて、何もできなくなった時も、自分が誇りに思えることがあればいいのですが。
昨年の梅雨の合間に訪れた沖縄。