自己啓発本だと思って読み始めた『習慣の力』。
習慣の力 The Power of Habit (講談社+α文庫)
- 作者: チャールズ・デュヒッグ,渡会圭子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/02/19
- メディア: 文庫
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意志力は筋力のようなもので、使えば使うほど消耗します。だから、日常生活はなるべくルーティン化し、意志力を温存するべきです。
たとえば、掃除。「面倒だけど掃除しなきゃ。今日はどこを掃除しようか…」と決めるだけで意志力を消耗します。毎日、一週間、一か月、一年といった単位で掃除をルーティン化しておき、迷う前に体が動くようしておくといいでしょう。
そういった具体的なノウハウも得られるのですが、それ以上に学ぶべきことが詰まった本でした。
デパートで縫製の仕事を終えて帰路についたローザ・パークスはバスに乗ります。
当時は白人が前部席、黒人が後部席、その中間の席はどちらの人種も座っていいことになっていました。ローザ・パークスは中間席に座っていたところ、後から乗ってきた白人男性に席を譲るように運転手に言われます。
席に座り続けたローザ・パークスは警察に逮捕され、これが公民権運動の震源となりました。
ローザ・パークス以前にも公共交通での人種隔離法に違反して投獄された黒人はたくさんいます。
なぜローザ・パークスだけが時代を動かしたのか。
それは、彼女が数十もの社会的な組織のメンバーだったから。人種や経済状態を超えた知り合いがたくさんいたのです。
一般的には、収入や生い立ちが似ている人と友達になることが多いのですが、ローザ・パークスは農民から大学教授まで、あらゆる階層の人々とつながっていました。
そして、彼女と直接知り合っている人から広がったゆるいつながりがバスのボイコットへと発展し、アメリカの社会を変える大きな運動となっていったのです。
強いつながりがあれば、いつでも助けてもらえると思いがちです。でも、実際には弱いつながりが力を発揮するのです。強いつながりが閉鎖的なのに対し、弱いつながりは新しいネットワークをもたらすからです。
高齢になるとともに、物だけでなく人間関係も断捨離すべきだと思っていました。
人付き合いはわずらわしいことが多いので、本当に気の合う少数の人を厳選するつもりでした。
でも、いくら人数を限定したところで深いつながりはエネルギーを消耗します。それよりも、気を遣うことなく自由につながったり離れたりできる弱いつながりを広げようという気になってきました。
損得勘定は抜き。「私がこれだけやってあげたから、あなたも返してほしい」と期待するのではなく、あげっぱなしでもいいし、そのまま縁が切れてもいい。
私が死んでも知らせる必要はないし、偶然知ることがあれば「そう言えばあの人、この頃見かけなかった」と、ちょっと思い出してもらえるだけで十分です。
昨年訪れた草津温泉のレトロな郵便ポスト。今では友だちに郵便を出すという習慣もすっかりなくなりましたが、その代わりに新しいコミュニケーション手段が次々と生まれています。