フィンランド行きを決めて、まず着手したのは、宮崎駿の映画を観ること。
日本を訪れるフィンランド人は宮崎ファンが多いのです。
ヘルシンキでお世話になる予定の編集者エリカもその一人。なぜだか日本的なものに惹かれ、ヘルシンキ大学で日本語を学んだそうです。
「あなたのベスト・ミヤザキ・ムービーは?」と聞かれ、「千と千尋の神隠し」と答えました。実は宮崎アニメはそれほど観ていないのです。
「Spirited Away(千と千尋の神隠しの英語タイトル)は、意味がよくわからなくて、途中で置いていかれるような気になってしまった」とエリカ。
エリカが好きなのは「となりのトトロ」だそうです。
そこで、DVDを借りました。子供向けのほのぼのとした話だばかりと思っていたのに、お母さんが一番恋しい年頃の姉妹の気持ちを思うと、胸が締めつけられるような悲しさを感じます。
なぜ、さつきとメイにトトロが見えたのか?
妖精だらけの国・アイルランドの詩人イェイツの言葉を思い出しました。
どんな人間でも、もし人の心の奥に深い傷跡を残すような目に会えば、みんな幻視家(ヴィジョナリー)になるからだ。しかし、ケルト民族は、心に何の傷を受けるまでもなく、幻視家(ヴィジョナリー)なのだ。
- 作者: W・B.イエイツ,井村君江
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1986/04
- メディア: 文庫
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二人はお母さんの退院を待ち望んでいたけれど、お母さんは結局帰ってこないんじゃないか。エンドロールでは、お母さんと姉妹がなかよくお風呂に入っているシーンが流れますが、さつきとメイの願望のようにしか見えません。
子供向けの話以上の何かがありそうで、ネットで検索してみると、「となりのトトロの都市伝説」がざくざく出てきます。
「さつきとメイは死んでいる」
「トトロは死神で、猫バスはこの世からあの世への乗り物」
「お母さんの病気は肺結核で、当時は不治の病」
そんな情報を仕入れて、もう一度「となりのトトロ」を観るとまるでホラー映画です。エリカにこの話をしたら嫌われるでしょうか?
トトロの語源が北欧の妖精「トロール」であることもわかりました。幼いメイは「トロール」と言えなくて、「トトロ」になったのです。
トロールといえば、ムーミントロール!
アニメのムーミンはほのぼのしていますが、原作を読むとかなり物悲しいお話です。特に「ムーミン谷の冬」や「ムーミン谷の11月」。
作者のトーベ・ヤンソンはフィンランド人ですが、人口の6%程度を占めるスウェーデン語系。自分の言葉が自国で少数派であることの悲哀が、ムーミントロールを生み出したのではないでしょうか。