いつまでも学生時代の延長のような生活を送っているせいか、いい年をして、自分が大人だという自覚がありません。
今年になってフィンランドの友人が一気にできました。
10代から60代まで、さまざまな年齢ですが、全員、精神年齢は私より上でした。
サムとエリカ夫婦の行き届いた生活スタイルには感心してばかりいましたが、二人の子供たちも、そんな両親のもとでしっかりと育っています。
長女のピハラは18歳になると同時に、カウチサーフィンに登録し、友達と二人だけで日本旅行。
「母親として心配じゃなかったの?」とエリカに聞くと、こんな答えが。
「それは心配だけど、私だって18の時にイギリスに旅行しているから、反対できなかったの。
ピハラは私と同じくらいの分別はあるから、トラブルが起こっても、解決できるはずだと思った
それにイタリアやスペインなら危険なことがあるかもしれないけれど、日本は安全な国だし」
マイヤちゃんという20代のかわいい女の子を東京でホストして、彼女が我が家を旅立つときは「一人旅、大丈夫だろうか」と心配しました。大きなバックパックを背負った彼女を、ランドセルを背負った小学一年生の母親のように見送ったものです。
ヘルシンキでマイヤちゃんのお母さんとお会いして、「お嬢さんの日本旅行、さぞや心配だったでしょう」と話を向けると「いいえ、全然。マイヤは大人ですから。ただ、マイヤは睡眠時間が長いので、日本でちゃんと眠れているかどうかが心配でした」と言われ拍子抜け。
たしかにマイヤちゃんは、うちでもよく寝ていました。
サムとエリカの家に泊めてもらった翌日は、ピハラの大学入学の日でした。
理系の名門アアルト大学で数学を専攻します。
サムとエリカに「一緒に行かないの?」と聞くと、けげんそうな顔をされました。
フィンランドには子供の大学入学についていくような親はいないのです。だいたい、日本のようなセレモニーはないそうです。
サムによれば、フィンランドでは大学の学費が無料で、親がお金を出すわけではないので、親はあまり関係ないというのです。
もちろん、求められればアドバイスを与えるけれど、最終的にはピハラの決断によって大学進学を決めたそうです。
中野のスオミ教会で吉村先生も似たようなことをおっしゃっていました。
フィンランドの大学は学費が無料なのに加え、節約すればなんとか暮らせるお金が支給される。夏休みにはアルバイトもするので、ほとんどの学生は大学入学と同時に親に頼らず自活する。だからフィンランド人は大人になるのが早いと。
スザンヌの紹介で知り合ったアーティストの安藤君は、ヘルシンキに長期滞在して日本のアートを教えたり、デザイン展やアニメ、コスプレ関係の原稿を書いています。
その中の一つ、マンガ喫茶で開かれた執事イベントの記事から。
日本のバトラー・カフェでは成人〜中年女性のお客さんも見られるようですが、今回の「バトラー・ナイト」イベントでは少なくともバトラーイベントを意識して来られたその年齢層の方はほとんどいないようでした。これについては6人のManga Cafeのバトラーのうち唯一の女性バトラー、「カラクリ/Karakuri」さんがこう話していました。
「フィンランドの成人世代はファンタジーは抱くことを知らず、こういった催しをエンターテイメントとして理解していないの。その一方で若い世代は、新たな体験としてこれを受け入れているわ。今の若い世代が大人になるころには一般的に受け入れられるようになるかもしれないけれども、現在はまだ一般的に受け入れられないのではないかしら」
私が友達になったフィンランド人は、「日本が大好き」という人ばかりです。
だからといって、オタク趣味に溺れて日常生活をないがしろにするわけではなく、フィンランドではしっかり社会人をやっていました。
彼らにとって、日本を旅することは、抑圧しているファンタジーを解放することなのでしょうか?
我が家に泊まったユハナ、ミッカ、ヨルマたち男の子はヒマがあれば秋葉原や中野ブロードウエイに行ってました。
フィンランドにだって、国民的ファンタジーのムーミン・シリーズがあります。
しかし、タンペレ大学卒業のユハナ君は、タンペレのムーミン谷博物館に一度も行ったことがないそうです。
「一度もない!? 東京では三鷹ジブリ美術館に行ったのに! ユハナ君、それ、おかしいよ」と口走ると、「そんなにスキャンダラスなことだろうか」とびっくりされました。