フィンランドでは、年齢的には若くても、精神的に成熟している人とばかり会ったような気がします。
たとえば、スザンヌのフラットにカウチサーフィンで泊めてもらったとき。
100平米以上ある広いフラットで、8畳ほどの個室が3つ。
スザンヌ(ドイツ人)、ヴィクター(ルーマニア人)、クリスティーナ(ロシア人)の3人でシェアしています。
ヴィクターだけ男性ですが、まったく問題はないそうです。
このあたり、日本人として最初は理解しにくかったのですが、異性二人で海外旅行をするからといって、必ずしも恋人同士とは限らないのです。たまたま目的地が一緒で、一人より二人のほうがコストも割安になるし安全だという理由で一緒に旅するそうです。
だからフラットシェアも、男女の違いより、価値観の違いのほうを重視するのでしょう。
3人ともヘルシンキに暮らす外国人であり、カウチサーフィンのミーティングで出会ったそうです。
異国の旅人を自宅に泊めるカウチサーフィンの精神を受け入れる価値観が一致したからこそ、3人でフラットを共有できると判断したのでしょう。
とても興味深かったので、根掘り葉掘り質問してしまいました。
家賃は固定なので3分の1ずつ分割。月によって変動する電気代はスザンヌ、水道代はクリスティーナ、ネット接続費はヴィクターがまず払い、3で割って残りの2人に請求。
掃除とゴミ出しは1週間交代。
カウチサーファーは重ならないように調整し、残り2人の了承を得てホストする。
「これまで何か問題は起きなかったの?」と聞くと
「全然。3人とも大人だから」とスザンヌ。
ヴィクターはヘルシンキの大学で天文学を研究していますが、博士課程は別の国の大学に願書を出しているそうです。
彼がいなくなると新しい人を探さなくてはいけませんが、スザンヌはまったく心配してないようすです。
食事は各自自由ですが、スザンヌが私のために特別メニュー(ホウレンソウのパンケーキ、ミートボール、ジャーマンポテト、チョコレートケーキなど)を料理してくれたときは、在宅していたヴィクターにもご馳走していました。
食器は各自のものが決まっています。
皿洗いを手伝っていて、コーヒーカップを洗おうとしたら、スザンヌが「それはクリスティーナのだから洗わないで」と言います。
好意で人の食器まで洗っていたら、それが当然となってしまう。そのあたりはきっちり線引きしているようです。
私はスザンヌたちのように大人ではないから、こんなふうにスムーズに他人と共同生活を送る自信はありません。
高齢者になったら、ぎりぎりまで自立した生活を送り、ぽっくり死ぬのが理想ですが、ケア付きの施設に入所しなくてはいけない日が来るかもしれません。
いくらなんでも、その頃には大人になっているんじゃないだろうか。いや、自分は大人でも、同じ入所者に精神的に子供の人がいたら、くだらないトラブルが山のように起こるだろう。いやいや、認知症が進行して、そんなことを考えるどころじゃないかも。
黒猫のモーリとはすっかり仲良しになりました。時差ぼけで早朝に目覚めても、モーリがそばで寝ているとほっとしました。
世話をするのは、飼い主のクリスティーナだけ。「だってヴィクターや私まで餌をやったら、モーリがますますデブになっちゃうじゃない」とスザンヌ。
スザンヌ特製のドイツメニュー。彼女は私にとって自宅に泊まってもらった最初のカウチサーファーでしたから、東京で張り切ってホストしました。ヘルシンキでその何倍もの親切を返してもらいました。
スザンヌをホストしたのは今年の2月です。