JALのマイル修行のために小松空港に何度も飛んでいた私は身の縮む思いです。遊び目的で何度も搭乗し、お正月明けの来週は「どこかにマイル」で羽田と札幌を往復する予定。
どこかの航空会社は事故が起こったら客室乗務員が真っ先に逃げ出したという噂があるのに、JALの機長とスタッフは乗客全員の非難を確認して最後に脱出したという報道に接し、頭が下がりました。
アメリカで「客室乗務員は日本人女性のあこがれの職業」と話すと「本当? 空飛ぶウエイトレスみたいなものなのに」と意外そうな反応が返ってきたことがあります。
昨年のスペイン巡礼では、往路はJALのコードシェア便でフィンエアーを選び24時間の遅延。いつもJALに乗っているので、機長と客室乗務員のフレンドリーで臨機応変な姿勢が新鮮でした。
パリ到着からの一週間分の予定を組んで宿も予約していたので「貨物室にスマホが一台落ちただけで出発できないのか」と思いましたが、機長は「安全に関することだから、ヘルシンキ本社のテクニカルと連絡を取って対策を協議している」とアナウンスしていました。万一のことが起これば乗員乗客の命が一瞬にして失われる可能性のある航空機には、見切り発車はないのです。
復路はマドリードからイベリア航空でヒースローへ飛び、JAL便へ。機内に入り日本人CAさんの挨拶を受けた瞬間に、もう日本に帰ったかのような安心感を抱きました。往路とはまったく逆で、何のトラブルも起こらず定刻通りに羽田着。機内で出されたスペインの白ワインがおいしくて、無事に帰国できるうれしさから調子に乗ってグラスを空けていると、CAさんがお代わりを持ってきてくれました。
いつも完璧な身なりで、にこやかに丁寧なサービスを提供するJALのCAさんたちは、徹底した訓練を受けた保安要員でもあるのです。
何事もなく日常生活を送り、行きたい場所に出かける。天変地異や大事故が起こるたびに、私が当たり前だと思っていることは、多くの人の仕事に支えられていると実感します。
ナポリには、卵城という奇妙な名前の中世に建てられた海上要塞があります。
魔術師が城の基礎部分に卵を埋め込み「この卵が割れるとき、城もナポリも滅びる」という呪文をかけたのです。
私たちの日常生活も卵の上で成り立っているようなもの。いつ割れてもおかしくありません。
この世と別れる前に健康寿命が尽きて、自由に動けないまま老年期を送るのはいやだと思っていましたが、一瞬にして命を落とすことだってあるのです。
新年が明けたのに、まったくおめでたいと感じられなかったお正月でした。
スペインの巡礼宿は朝食が出ないところが多く、日の出前(といっても午前7時頃)に出発し、最初に着いた街のバルでトルティーヤ(スペイン風オムレツ)を朝食替わりにしていました。じゃがいもと玉ねぎ入りが一般的ですが、店によって具材も焼き加減もさまざまです。
これからは卵を食べるたびに、無事に生き続けていることに感謝しようと思います。