翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

諏訪山探訪と墓場の迷子

今年の2月は父の三周忌のはずでしたが、オミクロン株の蔓延で神戸への帰省を断念。その代わりとして彼岸のお墓参りに行ってきました。

私の実家は神戸で夫の実家は大阪。朝一番のJAL便で伊丹空港に到着し、解散して別行動。お墓参りにはつきあってくれるというので、お昼に神戸元町で待ち合わせることにしました。

 

伊丹空港から神戸に出て、諏訪山を訪れることにしました。

天下の奇書『周易裏街道』、古書店でとんでもない価格だったのですが、復刻版が出たおかげで入手できました。仁田丸久氏の易の講義を記録したもので、場所は諏訪山房とあります。最初は長野の諏訪市かと思っていたのですが、神戸の山の手の諏訪山でした。

神戸元町から徒歩20分ほどで諏訪山のふもとに到着。神戸は海と山の距離がとても近いのです。

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石畳の裏道、まさに周易裏街道!

はりきって登り始めたものの、けっこうきつくて息切れします。講座が終わって帰ろうとした方が足をすべらせて崖を転落したという話もあるほどです。

 

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諏訪神社に到着。神社の由来を見ると、信州の諏訪大社から潅頂とありました。仁田丸久氏は敬虔なキリスト教徒だったそうですが、近所のこの神社にもお参りしたかもしれません。易の上達を願って手を合わせました。

おみくじを引いたら、第3番の末吉。運勢は「悩みの多い時だが、あせって事を起こさずにチャンスがくるのを待つのがよい」、学業は「力量不足」。易の道はまだまだ遠そうですが「信念を曲げたり目標を変えてはいけない」とあるので、続けることにします。

3は易では「離」、すなわち「火」です。ろうそくとお線香を買ってお供えしました。

 

お昼に夫と待ち合わせて両親の墓参りへ。神戸市営の鵯越(ひよどりごえ)墓園は、源平合戦義経が奇襲をしかけた場所です。

もともとは両親の出身地である岡山に先祖代々のお墓があったのですが、神戸に転居以来、ろくにお墓参りにも行かなかったため、親戚にうるさく言われて墓じまいをすることに。両親は「子供がなんとかする」と考えていたのか、終活にはまったく取り組んでいませんでした。

私が入る墓ではないのですが、両親の介護のために月1回は帰省していたので、ついでだと思ってお世話になっていたケアマネさんに相談。神戸市営の墓園を勧められました。抽選方式だから気長に応募したらいいと言われたのですが、初回で当たりました。市営なら兄の子供たちが墓じまいで苦労することもないでしょう。

 

東京と違い、神戸の郊外は車社会です。墓に行くのはいつも兄の車。ところが今回、兄が神戸にいないので、電車で行くことにしました。

最寄りの駅は神戸電鉄鵯越駅。タクシーで行けばいいというのですが、タクシーがつかまえられるような駅ではありませんでした。しかたなく心臓破りの坂道を登って、墓園の入口まで歩き無料の巡回バスに乗り込みました。

実家のお墓のある「さくら地区」で降りたのですが、いつもの景色と違います。標識を見ると「さくら〇区」と数字が振ってあります。はて…実家の墓はどこだろう…。歩き回ってもわからず、ますます混乱。兄の車だと、お墓のすぐ近くの駐車場からすぐだったのに。私はそのゾーンだけをさくら地区だと誤解していたのでした。さくら地区だけで11区まであるようで、歩いて探し回るのはとても無理。はるばる東京から来たのに、お参りできないのか。

夫の美点は、こういう時に一切私を責めないところ。それが救いでした。

兄に電話してみたところ、出先なので番号がわからないとのこと。墓園の管理事務所にかけてみるように言われました。恥を忍んで事情を話すと、事務所の人は丁寧に教えてくださり、無事に実家のお墓にたどりつくことができました。

 

父の死を悼む湿っぽい気持ちは消え「いくつになっても、間が抜けた娘だ」と苦笑している父を想像しました。

苦労して運転免許を取ったのに、ペーパードライバーになったのは空間認識能力が欠けていることを実感したから。ロングトレイルを歩いてみたいと思っているのですが、自然の中に入らず街中だけにしていたほうが無難でしょう。

そして、加齢とともに脳が委縮していき、自分がどこにいるのかわからない高齢者になった自分をリアルに思い描けました。鵯越霊園で見渡す限りの墓の中で途方にくれた感覚、未来の先取りです。

 

実家の墓は「さくら8区」。諏訪神社のおみくじ3番を内卦とし8区を外卦にして易にすると地火明夷(ちかめいい)。「明」の叡智や文明が傷つけられた状態、あるいは太陽が地下に沈んだ暗い世の中です。あまりおめでたい卦ではありませんが、夜に働く水商売や文筆業などには吉。六十四卦の中で最も私に縁のある卦です。