易64卦のなかで水雷屯(すいらいちゅん)・坎為水(かんいすい)・水山蹇(すいざんけん)・沢水困(たくすいこん)は『四難卦』と呼ばれています。
悩み苦しんでいるときに四難卦が出やすいのですが、易経は「変化の書」ですから、そのうち事態は打開されます。
高知の天童春樹先生を訪ね、「日本語教師のなりゆき」で易を立てていただきました。
天童先生とは占い誌の連載を一緒にやっていたので、数年前までは定期的に東京で顔を合わせていました。雑誌が休刊になって、お会いする機会がなくなり、私がライター業のかたわら、日本語教師になったことを先生はご存知ありません。先入観がないほうがいいだろうと「昨年から副業として新しい仕事を始めました」とだけ説明しました。
そして出たのが、水雷屯の五爻。
「五爻だからそのうち苦労は終わります。6月頃に」と天道先生。易の占断を下す天童先生はいつも迷いがありません。
八卦を季節や自然に置き換えれば、水は冬、雷は春や木。地上はまだ寒く、芽が出せない状態です。それでもやがて季節が変わるのだから、辛抱せよという卦。始まりに難があるので、そこを過ぎればなんとか打開できます。
「伏しているのが地雷復(ちらいふく)。徐々に伸びていく卦だから自信もつく。地雷復の一陽が越爻して、地水師(ちすいし)。教師の師で、まさに先生ですな」
この言葉を聞くために、JALの「どこかにマイル」の行き先が高知になったのだと思いました。
昨年の春から日本語学校の教壇に立ち、数えきれないほどの失敗をして、胃が痛くなりながらも、なんとか投げ出さずに続けてきました。この数十年の仕事運で一番苦しい年でした。苦労知らずで気楽に働いてきたツケを一気に払った気がします。
だからこそ、水雷屯。
告げられた瞬間は「わっ、四難卦が出た」とがっかりしましたが、易の卦は将来だけでなく過去や現在も含めた状況を映し出します。たしかに苦労したことを易の神様も認めてくれたのでしょう。
そして水雷屯の初爻や二爻だったら、まだまだ苦難は続くけれど、五爻なら先は見えています。
易の六十四卦の順番にも意味があります。
一番目は乾為天(けんいてん)で父、二番目は坤為地(こんいち)で母。父と母から生まれるのが水雷屯。産みの苦しみです。子供が生まれたら教育しなくてはいけません。そこで三番目は山水蒙(さんすいもう)。山水蒙の「蒙」は啓蒙の「蒙」です。