翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

マクドナルドのシニアクルーになれるだろうか

イオングループの都市型小型食品スーパー「まいばすけっと」が自宅のすぐ近くに開店して、重宝しています。野菜や魚、肉などの生鮮食品も取り揃えられ、超目玉特売はありませんが、スーパーとそれほど変わらない価格です。

新規開店の工事中、スタッフ募集の貼り紙がありました。週1日からでも可とあり、一瞬、応募を考えました。村田沙耶香の『コンビニ人間』を読んで、興味を持ったからです。新規オープンなら全員が新入りで、もたもたしても許されそうだし。

興味本位で働くべきではないと思って断念しましたが、『ライフシフト』を読んで「それでもいいのかも」と考えが変わってきました。マルチステージの人生では、高齢になって新しいチャレンジをしたり、同じ会社でも責任が小さいポジションに降格することだってあり得ます。社会勉強のためのアルバイトが学生に許されるのなら、シニアだっていいのでは?

 

現場で働いて、この世の仕組みや流れを実体験したい。そう考えると、最もアルバイトしたいのはマクドナルドです。

橘玲は、学生時代にマクドナルドでアルバイトをしています。

この本によると、マクドナルドではすべての仕事が厳密にマニュアル化されているそうです。たとえば掃除なら、どのような順番でどの道具を使って何分で作業するか指定されており、その通りにやると時間通りぴったり終了。ドリンクマシンはカップがいっぱいになると自動的に止まるし、フレンチフライ機はポテトがカリカリに上がったところでカゴを油から引き上げるようになっているので調理の失敗もなし。

家事が苦手なので、こんな完璧なマニュアルがあるならぜひ見たいし、実際に働いてみたい! 

 

アメリカでは日本よりさらに先に行っています。

外食産業のビジネス記事翻訳を30年ほど続けていますが、最近はロボットとAIの記事が目立ちます。揚げ物専用ロボットが登場したのは数年前。マクドナルドのポテトを人間が揚げる時代はもうすぐ終わるかもしれません。専用アプリや店頭の端末、自動音声システムでの注文が当たり前となり、カウンター業務も大幅に削減。唯一人手が足りないのは配送ドライバーです。

現在のところ日本のマクドナルドでは、60代や70代のシニアクルーも積極的に採用しているようですが、いつまで続くことやら。だったら今こそ変化の最前線に身を最後のチャンスかもしれません。

 

翻訳を連載しているのは外食産業の業界誌なので、「シニアワーカーが体験したマクドナルドの現場」みたいなタイトルで提案すれば記事として採用されるかもしれません。

でも、そういうのは現場でバレたら嫌がられるでしょう。ジャーナリストの横田増生氏はユニクロに潜入するためだけに離婚して再婚、婿養子となり奥さんの姓に変更しアルバイトに応募。1年ほど働き熱心なスタッフとして現場では評価されましたが、身バレして即刻クビになっています。

 

コンビニ人間』は主人公は、普通の人の感覚が理解できず、どう生きていけばいいのか途方にくれていたところ、コンビニで働くことで社会の中で正常に動く喜びを見いだしました。

出家して修道院や寺院に入るのは、厳しい道を選ぶストイックなイメージがありますが、案外楽だと聞いたことがあるから。経済的な不安がなくなるだけでなく、次に何をするかがすべて決まっているので、思い煩うことがないのです。

 

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函館のトラピスチヌス修道院の聖ミカエル像。

 

売店には修道女の一日のイラストが貼ってありました。

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「午前3時半起床」というのにびっくりしましたが、就寝は午後7時45分。時差がある国に滞在していると思えば、そんなにきついスケジュールではありません。

女子修道院を舞台にした曽野綾子の小説『不在の部屋』にこんな一節があります。

世俗的にも評価される仕事を多くしよう、というのはまだ、神さまよりも自分を重く考えている証拠である。字を書きかけていても、種をまきかけていても、針に糸を通そうとしかけていても、ベルが鳴ったなら、「最初のベルの音(ファースト・サウンド・オブ・ベル)」でやめなければいけない。ペテロとその兄弟のアンデレがガラリヤ湖の畔で主に召された時、二人は網を捨てて、そのまま主に従ったのであった。

主人公が割り当てられた仕事は本の修理で、作業終わりのベルが鳴っても、翌日の段取りを考えて切りのいいところまで済ませようとしていました。後に『自分は従順ではなかった』と反省します。

これはカトリックぽい考え方で、プロテスタントは「知恵を働かせて効率的に働くことが神に仕えることだ」と考えるのかもしれません。それが行き過ぎるとブラック企業のやりがい搾取になります。

こんなことをああだこうだと考えているより、さっさと現場に出て働いたほうがいいのかも。