3年間、教師として務めた日本語学校の休職を決めて、ゆとりのある生活が送れそうです。
思い出すのは、アガサ・クリスティの自伝に書かれていた若い頃の彼女の理想の一日。
アガサ・クリスティー自伝〈上〉 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
- 作者: アガサクリスティー,Agatha Christie,乾信一郎
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/10/01
- メディア: 文庫
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朝、目を覚ます、はっきり目がさめる前にもう心の中でこういってる。
「さて、今日はどういうふうにするかな?」
選択の自由がある。目の前にある一日を思うように計画することができる。
私は、しなければならないこと(これを私たちは義務といっている)がたくさんないとはいわない。もちろんある。家の中にもなすべき仕事がある。写真入れの銀の額縁を磨く日、ストッキングを繕う日、「歴史上の大事件」を勉強する日、町へ出て小売り商の勘定をみんな支払う日。手紙や覚え書きを書くこと、体重を測ったり、運動すること。そして刺しゅう―でもこれはみんな私の考え通りに手はずをきめ、私の選択に任されていることである。
私は自分の一日を計画して、こういえる。
「今日の午後までストッキングはそのままにしておいて、今日は下町へ出かけ、別の道を通って帰る途中、あの木が花を咲かせているかどうか見てみましょう」
ストッキングの繕いとか小売り商支払いとか、所帯じみてはいるのだけど、なんて豊かな一日だろうとうらやましくて記憶に残りました。
特に「すべては私の選択に任せられている」と言い切れるところ。
私にもこんな日が来るのだろうかとずっと思って、50代後半になってやっと手に入れられそうです。学校を出てからずっと働き詰めでしたから。
今の日本では65歳、下手したら70代も働かなければいけないような風潮ですから、あまり大きな声で言えませんが。
この時、クリスティはまだ独身ですが、こんな生活ができるのも、彼女がイギリスの上流階級に属していたから。クリスティの父は不労所得で安楽に暮らしていける身分で、働いていませんでした。
うちは子供を持たず、夫婦二馬力で働くという少子高齢化の日本を作った戦犯のような国民ですが、教育費の負担がない分、あくせく働かなくて済みます。
だから、日本語教師もやめたくなったらすぐやめられたわけですが、承認欲求が強くて、貧乏性の私が暇な毎日に耐えられるか不安です。
ホリエモンがこんなことを言っていました。
これからの世界で生き残れるのは、安定した仕事を与えられた人でも、お金持ちでもない。働かなくてもいい世界で、なおモチベーションを持ち、何らかの行動を起こせる人が生き残れるのだ。
クリスティのように、「あの木が花を咲かせているかどうか見てみる」だけで心が満たされるような風流な趣味もありません。
しかし、こんなふうに思ったクリスティも、結婚後はミステリーの女王となり小説を量産することになるのですから、わからないものです。
3月下旬からは桜が咲くので、クリスティさながら「花を咲かせているかどうか見てみる」だけで1か月ぐらいは退屈せずに済みそうです。
クリスティの自伝からはさまざまな教訓を得ました。最も心を動かされたのは、二番目の夫を射止めたこのエピソードです。
時間ができたら、クリスティの自伝など印象深かった本を再読する予定です。