翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

介護離職はしない

私は東京、親は神戸に住んでいます。

パーキンソン病を患っている母を父が老々介護していたのですが、限界になり施設へ入所。父は介護保険に加えて自費でヘルパーさんを頼んで、なんとか高齢一人暮らしを続けています。

 

母が発病した当時は、月に一度のペースで帰省していました。フリーランスのライター業はパソコンさえあれば、どこでも仕事ができます。

 

母の施設入所が決まり、兄から「大変だろうから3カ月に一度の帰省でいい」と言ってもらいました。兄は両親と同じ神戸在住です。

 

ところが、その兄が発病。3か月に一度どころか、月に2回帰ることもあります。

 

老後の暇つぶしのために日本語教師の資格を取ろうと思ったのが4年ほど前。

働くのは先でも、とりあえず資格を取っておこう。加齢は待ったなしですから、始めるなら一日でも早いほうがいいと、思い立ったらすぐ講座に通い始めました。

 

日本人なんだから日本語を教えられると思い込んでいたのですが、養成講座に通ってみると、ものすごく大変なことがわかりました。しかも、机の上の勉強だけでは教える技術は身に付きません。

 

実際に教えるのは大変そうなので、親を見送ってからにしようという心づもりでした。しかし、友人の一人が「それじゃあ、親がいつ死ぬか、死を待つことになってしまう」と言いました。たしかにそうなので、見切り発車して教え始めました。

 

どこにいようが締め切りまでに原稿を送ればいいライター業とは違い、教師は必ず決められた時間に教室にいなくてはいけません。会社勤めの経験が短い私には、本当にきつい。しかも教え方が下手で学生からのクレームにおびえる日々が続きました。

昔の日本の教育では先生の言うことは無条件に聞くものでしたが、外国人学生にとって先生はサービス業。払った授業料に見合う価値を求めます。

 

そこまで神経をすり減らしながら教えても、金銭的には恵まれません。 

日本語教師はそれだけで生計を維持するのはむずかしい仕事なので、中高年の女性が多い職場です。親の介護を理由に退職する人もちらほらいます。

 

あまりにも仕事量が多くて、辞めたくなることはしょっちゅう。親の介護を理由にすれば、波風立てずに辞められるかと考えたりします。本業があるので、日本語教師を辞めても経済的に困ることはありません。

 

しかし、親を理由に辞めてしまえば、感情的なしこりが生じます。

「親のために私の人生を犠牲にした」と思いたくありません。半分ボランティアのような日本語教師の仕事ですが、なんとか続けていきたいと思っています。子どもの頃から外国にあこがれていた私には最高の仕事です。

 

幸いにして、日本には介護保険の制度があり、自費を追加すれば高齢者の一人暮らしもなんとか維持できます。私が高齢になった時は、とても父のような手厚い介護は受けられないでしょうけど。

 

介護ヘルパーさんたちの家事能力にはいつも驚かされています。

東京の仕事の合間を縫って帰省する私に「大変ですね」と声をかけてくれますが、私が仕事を辞めてぶらぶらしていたら「なんでこんな人のために介護サービスを提供しなくちゃいけないの」と思うんじゃないでしょうか。

 

介護はハードな仕事です。身内だから介護するのは当たり前という重圧に押しつぶされないように、任せられる部分はプロに任せたほうがいいのでは。むずかしい高齢者の扱いも、賃金が生じるからこそ、割り切って働けるのではないでしょうか。

 

高齢化が進み、介護制度がいつまで維持されるかわかりませんが、とりあえずは自転車操業を続け、介護離職は避けたいと考えています。

 

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 マイルを貯めるために飛行機を利用しています。

月曜日の作文の授業で「先生、私は週末に京都に行って、とても疲れています。たくさん書けません」という学生に、心の中で「あのねえ、私はあなたの2倍以上年上で、京都より遠いところから帰ってきたのよ」とつぶやくこともあります。