前回、「阪神の優勝は人生で3度まで。それ以上は望むな」という言葉を紹介しましたが、私にとって阪神タイガースの野球はプロスポーツというより神事です。
もちろん、阪神が優勝するのはうれしいけれど、あまりたくさん優勝するとありがたみが薄れるような気がします。
伊勢神宮の遷宮が20年に一度であるのと同じで、たまにあるから神々しい。いくら神社の熱心な氏子でも、毎日お祭りがあって神輿をかついでいたら、本業がおろそかになります。
いつも勝つわけではなく、負ける時は負ける。
負けが続いて、そろそろ勝つだろうと期待していても、泥沼の連敗がどこまでも続く。あきらめていたら、ひょっこり勝つ。
そして、ごくごくたまに、今年のCSのように一気に4連勝することもある。
人間が決してコントロールできないことだから、野球の神様にすべてゆだねるしかないのです。
だから「常勝」なんて言葉を掲げるチームのファンとは相容れないし、解説者がしばしば口にする「流れ」をじっと見守るしかありません。
仏教の教えの一つ「一切皆苦」。
「人生は苦しいことばかり」と解釈すると仏教はあきらめを強いる暗い宗教のように見えますが、仏教伝道協会の仏教英語講座で、原語のパーリ語を直訳すると「苦」ではなく「思い通りにならない」という意味だと聞きました。
「人生は思い通りにならないことばかり」という境地に達することができれば、何が起ころうと穏やかな心を保てるはずです。
英語では"all things are causes of sufferings"と訳されることが多いようですが、これはパーリ語からではなく漢訳の「一切皆苦」を英語にしたものでしょう。
ケネス先生は、"Life is a Bumpy road(人生は凸凹道である)"と訳しています。凸凹であっても、景色が楽しめるかもしれないし、気持ちのいい同行者ができるかもしれません。
阪神タイガースの応援も、Bumpy road。
日本シリーズも平常心を保って観戦しようとしているのですが、凡人にはなかなかむずかしいものです。
8月の神宮球場。この日のヤクルト打線は強力で、ボコボコに打たれ涙目で帰路に着いたものです。