東洋占術の講座で学んでいた頃、最も新鮮だったのが十二支の解説。それまでは年賀状のイラスト程度にしか考えていなかった西洋かぶれでした。
十二支は自然界の植物のライフサイクルであり、後に動物を当てはめたものです。
生命の始まりは亥(い)。新しいサイクルに向けて種の準備を始めます。亥に人偏をつけると核。極小だけど強力なエネルギーを秘めています。
そして子(ね)は地中に埋まっている種子。丑(うし)は地中でヒモのような細い芽芽を出します。なるほど、丑に糸偏を付けると紐です。
亥子丑は木火土金水の五行では水、季節では冬。季節を12年サイクルとすると、亥子丑の3年間は暗くて寒い時期となります。
2019年の己亥(つちのとい)年からの3年間、景気はぱっとせず、2020年の庚子(かのえね)年はコロナ一色。延期された東京オリンピックは2021年の辛丑(かのとうし)年に「辛うじて」開催となりました。
そして来年の立春から壬寅(みずのえとら)年。
十二支は申から丑までが六陰時、寅から未までが六陽時とも呼ばれます。丑寅は陰から陽への変わり目。方位で鬼門と恐れられるのはこのためです。人間は不運より変化を恐れるものだから。
十二支を月に当てはまると寅月が始まる立春は、気温は寒いものの雪が解け始めて冬至の頃よりも日もかなり長くなっています。
植物のサイクルでは、寅になってようやく種から出た芽が地中から地上へ出ます。これまでの暗い3年間が打開される明るい兆しが期待できます。そして寅の上に乗っている十干は壬(みずのえ)。五行の相関関係では水生木で壬は寅にエネルギーを与えます。
先日、細木数子が亡くなり、安岡正篤の名前をよく目にしました。
年干年支が変わるたびに目を通す『干支の活学』。
壬は陽の水。孕む、すなわち妊娠の妊。そして担う、すなわち責任の任。「これまで積み重なった諸問題が増大し、それを立派に処理する、事に任ずる人物がどんどん出てこなかればならない」とありますが、日本にその力はもうないんじゃないかと悲観的になってしまいます。昭和47年の壬子(みずのえね)年でも安岡は「どうも私心・私欲・野心を逞しゅうする人物の方が多く出ると見なければならない」と書いています。
一方、寅の字の真ん中は「手を合わせる、約束する象形で、下の八は人。また寅は演じるに通じ進展を意味する」。
関西人は「トラ」と聞いただけで、阪神タイガースを連想して血が沸騰します。十二支の相場格言でも、丑でつまづいた後、寅は「千里を駆ける」。日本はもちろん、グローバル経済が失速せず走り続けることを願いたいものです。
前回の壬寅の年は1962年。アメリカでは40代半ばのジョン・F・ケネディ大統領がキューバ危機に対処し、20歳になったばかりのボブ・ディランはレコードレビューを果たしました。
そして日本は戦後の復興から1964年の第一回東京オリンピックに向けて行動成長への時代へ。今日よりも明日はもっと豊かになると確信できた日々だったでしょう。
四柱推命の鑑定では、陽転する十干十二支が巡ってきても、それを使いこなせる年回りかどうかが肝心です。占い師に「あなたが攻めの姿勢でいくべきなのは80歳から」とアドバイスされても、たいていの人にはそんな気力や体力は残っていません。国家も同じで、日本社会が若かった1962年と高齢化した2022年の壬寅では同じわけにはいかないでしょう。
寅年が来たら使おうと思って撮った小倉城の送り虎。雌雄一対で、迎え虎は雄で千客万来、送り虎は雌で招福。このブログを書いている翡翠輝子はタイガースファンの雌虎で、タイトルは「招福日記」。壬寅の年、多くの人が福を招きますように。