新年が明けて半月が過ぎたのですが、東洋占術では年の切替わりは立春。1月はまだ丑年です。しかも辛丑(かのとうし)年の辛丑月と六十干支が重なっています。
四柱推命の講座で、甲乙丙丁(こうおつへいてい)…の十干でどれが一番強いかという話になったことがあります。
陽の木である甲(きのえ)は堂々とした大木ですが、案外ぽきっと折れやすいもの。草花にたとえられる乙(きのと)のほうが、したたかに生き延びる。
陽の金である庚(かのえ)は強そうだけど、巨大な鉄の塊でも工夫すれば動かすことができる。どうにもこうにも動かせない大地を示す己(つちのと)が最強という結論でした。
そして、陰の金である辛(かのと)も恐ろしい。美しい貴金属や宝石にたとえられますが、シャープな切れ味の刃物でもあります。辛は「新」であり、中国では辛酉(かのととり/しんゆう)は革命が起こり王朝が代わる年とされてきました。
今回のトンガ火山の噴火で東日本大震災を思いだいました。十干は十年で一回りします。2011年は辛卯(かのとう)年で3月は辛卯月でした。震災が起こった日は金曜日で、週に1回の横浜中華街の占いの店に出勤していました。大きな揺れで筮竹が床に散らばったのをよく覚えています。この年と翌年は女性誌で占い関連の原稿依頼がごっそり減りました。
コロナもこわいけれど、いつ災害が起きるかわかりません。
2016年春には熊本地震。実家へ向かう夜行バスの中で、九州で地震が起きたことも知らず眠り込んでいました。日本語教師を始めたばかりの頃で、今は亡き父も元気でした。
占いは科学ではありませんから、AになればBが起こるといった公式は成り立ちません。さまざまなシンボルの一部を取り上げて、先の読めない人生の指針を組み立てようとする試みです。もし、正確に天変地異を予測できる占い師がいるなら、国家の中枢に召し抱えられ、決して表には出てこないはずです
十干十二支や九星の巡りを学ぶことで、人生の旅路のストーリーを組み立てられるようになりました。その時々の単発的な流れは、易やタロットなど偶然性を利用する卜術(ぼくじゅつ)も参考になります。
そして、組織に属していない私にとって、占いを通してのつながりも貴重です。毎年の冬至の年筮の会は一年の大きな節目になっています。
天海玉紀さんに声をかけてもらい、ウラナイ8が発足したのが2019年。母体となっているのが、まついなつきさんが店長の中野トナカイ。南阿佐ヶ谷に移転後はウラナイ・トナカイとなり、自宅のすぐそばなので顔を出すようになりました。
この公園に行くたびに、まついなつきさんのことを思い出します。
玉紀さんが開催した「ウラナイトナカイ・アースダイバー」でまついなつきさんと楽しく川沿いを歩いたことがあります。そんな機会がこれから何度もあるだろうと思っていたのに。
日本語学校で教えていた頃、桜の開花が近づくと学生は授業そっちのけで浮足立ってきます。「桜は毎年、咲きます」と口走ったら、「先生は日本人だからそんなことが言えるんです!」と抗議されたことがあります。1週間単位で学べるため、わざわざ桜の時期に合わせて来日する学生が多かったのです。日本語の勉強より、アニメやマンガで見た満開の桜を実際に見ることが目的です。
立春を迎えれば不穏な辛丑年、辛丑月が去ります。2月4日から壬寅年、壬寅月と年月が同一干支となりますが、翌月の癸卯月の下旬となれば桜も咲くでしょう。
毎年、桜は咲くけれど、社会と人間は刻々と変化して、同じ状況で見ることはありません。だからこそ、今年の春を楽しみに待っています。