12月最後の最後の日本語学校の授業後、ブラジル人学生のイザベルから声をかけられました。
「一人で年を越すんですが、どこかいいところはありませんか」
ホームステイの学生たちは、ホストファミリーと「レッド&ホワイト・ソングショー」を見て、「イヤーエンド・ソバ」を食べる、と楽しそうに話していましたが、イザベルは寮暮らし。
ヨーロッパの学生はほとんど一時帰国していて、寮には学生が少ないし、16歳という年齢は学生たちの中では若すぎて、友達ができにくいのかもしれません。
「渋谷の交差点ではカウントダウンがあり、そのまま明治神宮にお参りする人もたくさんいる」と説明しつつも、イザベルにはふさわしくないような気がしました。
いくら日本は安全だといっても、16歳の小柄な彼女が年末年始の渋谷の喧騒の中、一人でいるのはちょっとよくないのでは。
日本のまんがが大好きで、特に学園ものを愛読しているようですが、まんが喫茶で年越しというわけにもいかないし。
一人で年を越すというイザベルを見ていると、「寄る辺なき」という古風な言葉が浮かんできました。
実際のイザベルは、「寄る辺なき」どころか、お金持ちのお嬢様のはずです。世界最大の格差社会といわれるブラジルで、オタク趣味が高じた娘を日本に留学させる財力があるのは、超富裕層の家庭のみでしょう。
ホームステイを選ばなかったのは、イザベルの両親が庶民の家なんかに娘を滞在させたくないと考えたからかもしれません。
イザベルが一人で過ごすのにふさわしい年越しの場所が思いつかなかったので、「どこにも行くところがないのなら、うちに来たら?」と言ってみました。
イザベルの顔がばっと明るくなりましたが、「でも、先生にとって負担じゃないですか」。
このあたりは、子供のようでいて、ちゃんとわきまえています。しっかりと育てられたのでしょう。
「私はこの学校の学生のホームステイも受け入れているから、一晩ぐらい、なんでもありません」と説明しました。娘が通っている学校の教師宅なら、イザベルの両親も許可するはずです。
というわけで、新年はイザベルと迎えました。
教師だけじゃなく、母親みたいなこともするわけかと苦笑しつつ思い出したのがこのカード。天海玉紀さんのインナーチャイルドカードのセッションで最後に引いたものです。
ちょうど玉紀さんのブログでも紹介されています。
lady-joker.com
このセッションを受けた時は、日本語教師になるべきか迷っていました。
最後の3枚目で「妖精のゴッドマザー」が出た瞬間、「これは、やらなきゃ」と思ったのです。世界に魔法がかけられるのなら、かけてみたいから。
語学の勉強は基本的に辛気臭いものです。
少しでもいいから「日本語っておもしろい」と思ってもらえるような授業をしたい。そして、日本語だけでなく、日本文化に触れてほしい。日本に留学して楽しかったという思い出を作ってほしい。そんな気持ちで、日本語学校の教壇に立っています。
地球の反対側からやってきたイザベルと除夜の鐘を聞きながら、「妖精のゴッドマザー」のカードが少しずつ現実化してきたと愉快な気持ちになりました。