今でこそ「おひとりさま」という言葉が市民権を得て、温泉宿でも一人で泊まれるところが増えてきましたが、一昔前は女性の一人旅は何かと不自由なものでした。
「おひとりさま限定」や「一人一部屋同一料金」ツアーもあり、一人旅愛好家にとっては、楽しい世の中になりました。
「一人旅なんてとても無理」と思っていても、上野千鶴子の言う通り、誰でも「最後はおひとりさま」です。
- 作者: 上野千鶴子
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「子供がいるから一人にならない」と思っている人もいるでしょうが、老後に子供と同居するのもなかなか大変そうです。いくら親子でも相性があるし、一人で暮らすよりも孤独を感じるかもしれません。
「同居はしなくても、いざという時に子供がいると頼りになる」という根強い意見もあります。
先日、父の白内障手術の説明を受けた時「退院日は、支払いや手続きがあるので、家族に来てほしい」と言われ、子供のいない高齢者はどうするのだろうと思いました。
これだけ単身高齢者が増えてくれば、対応するシステムも整備されていくはずです。
入院経験のある友人の優春翠から聞いた話。
役所の人に付き添ってもらった一人暮らしのおばあさん、家族がいるおばあさんと同じ部屋だったけれど、日曜日のようすがまったく違う。
一人暮らしのおばあさんは、いつもと変わらずおだやかに過ごしているのに対し、家族がいるおばあさんはひっきりなしに窓から外を伺い、家族がお見舞いに来るのを今か今かと待ち受けていた。待っている間の焦燥感、家族が返ってからの寂寥感がひしひしと伝わってきて、家族がいるから幸せとは言い切れないと思った。
これで思い出したのが映画『八月の鯨』です。
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夫が若くして戦死し、未亡人となった妹(リリアン・ギッシュ)は、記念日には夫の写真の前に花を飾り、ワインを楽しみます。一方、姉(ベティ・デイビス)はあまり訪ねてきてくれない子供に不満を抱き、頑固でわがままになっていきます。
リリアン・ギッシュは「おひとりさまの上級者」を絵に描いたような優美な老女を演じていました。
私の理想の老後イメージですが、はたしてあんな風に年を重ねられるものか…。
箱根の宿に飾ってあった雛人形。