翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

宅を卜せず、隣を卜す

昨年秋から、湯島聖堂の陰陽五行講座に通っています。
教えてくださるのは、日本女子大教授の谷中信一先生。
陰陽五行については、占い学校の四柱推命周易九星気学、風水などの講座でさんざん学んできたのですが、アカデミックな世界でどのように教えられるのか、体験してみたかったのです。

第四講のテーマは、易と風水。
陰陽五行から占いが生まれたのではなく、占いが陰陽五行を取り込んだという解説。陰陽五行思想が成立するはるか昔から、人類は「将来を知りたい」という切実な願望を抱いていたのです。

その例として谷中先生が挙げた『晏子春秋(あんししゅんじゅう)』の話がとても興味深いものでした。
晏子春秋とは、中国春秋時代の名宰相、晏嬰(あんえい)の言行録です。
当時、風水理論は確立されていなかったけれど、住居の吉凶は占われていました。

宰相の地位にありながら、市井の質素な家に暮らす晏嬰。王はもっと豪華な家に住ませてやろうと、晏嬰が出張中に隣近所の住民を立ち退かせ、屋敷を広げます。
帰国した晏嬰は、喜ぶどころか、せっかくの屋敷を取り壊し、住民も呼び戻します。

王に対して、晏嬰はこう説明します。
「宅を卜せず、隣を卜す」
卜は「ぼく」と読み、占いのこと。

つまり晏嬰は、自分の住宅の吉凶を家相や方位ではなく、どんな人が隣近所に住んでいるかで占ったのです。
だから王様が勝手に隣人を立ち退かせたのは大迷惑で、ただちに呼び戻したのです。

この話を聞いて、数年前に女性週刊誌に書いた開運記事を思い出しました。
小野十傅先生に取材したものです。

風水ではすべての運を家庭にもたらす入口として、玄関を重視します。
しかし、いくら玄関の風水を整えても、日本のような住宅が密接している国では、ご近所から嫌われて、玄関周辺にネガティブな気が渦巻いていては、それだけで運気がダウン。
あなたや夫が出入りするたびに「あの憎たらしい隣人が」と思われるのと、「今日も元気で出勤しているのね」と思われるのは大きな違いです。
ですから、町内会や自治会の会合はさぼらずに、できるだけ顔を出すようにしましょう。
ゴミは正しく分別し、家の前を掃除するときは、イヤミにならない程度に隣家の前も掃いておきましょう。
小学館 女性セブン 2010年4月8・15日 VOL13)

転居を考えるなら、新しい住まいの日当たりや間取りを気にすると同時に、ご近所がどんな人かをチェックしましょう。特に集合住宅の場合は、共有玄関を使い、同じ間取りも多いので、住民の運気が似てきます。中古マンションを購入するなら、管理費を未納している人がいないか調べることをお勧めします。
運のいい人が住んでいるマンション、町内に住むのが最強の開運法です。


湯島聖堂孔子像。