「来年はどんな年?」と各雑誌の編集者に聞かれる時期となりました。
来年は午年。
午は陰陽の陽の極地。太陽が最も高く上がった状態を示すので、お昼の12字を「正午」というのです。
勢いが盛んなので、十二支の動物では馬のイメージを当てはめたのでしょう。
そして、東洋占術では十二支に甲乙丙丁戊己庚辛壬癸という十干を組み合わせます。
十干と十二支で、10と12の最小公倍数は60ですから、60パターンの組ができあがります。
昔の日本では、十干十二支で年月日を表記していました。
「壬申の乱」「戊辰戦争」は、それぞれ壬申の年、戊辰の年に起こりました。
もっと身近なところでは、甲子園球場は大正13年の甲子の年に完成したことで名付けられました。
先日、湯島聖堂の陰陽五行講座で「六甲山は、六十干支で甲の組み合わせが6つあるから」と、谷中信一先生から聞きました。
甲子、甲寅、甲辰、甲午、甲申、甲戌の6つ。
六甲おろしが吹き荒れる野球の聖地だからこそ、甲子園という名前がふさわしい。
60年で暦が一回りしますから、60歳になれば、生まれた年と同じ組み合わせが巡ってきます。
暦が元に還ったことで、「還暦」をお祝いするのです。
2014年の午とペアを組むのは甲。甲午(きのえうま)の年です。
前回の甲午の年は1954(昭和29)年です。
「来年は60年に一度の〜」を枕詞のように使って原稿を書いていたら、毎年続くうちに「もうオレはだまされないぞ。毎年、60年に一度じゃないか」と憤慨する某編集者が。
あおり文句で書いているわけではなく、六十干支の構造がそうなっているのです。
2007年の丁亥年は「黄金の豚年」、2010年の庚寅年は「ゴールデン・タイガー」などと呼ばれましたが、五行の木の色は青なので、2014年は「ブルー・ホース」?
庭の水撒きのホースみたいで、あまりかっこよくありません。
「蒼ざめた馬」という言葉があり、アガサ・クリスティが小説のタイトルに使っています。
出典は『ヨハネの黙示録』。「死」を象徴する第四の騎士が蒼ざめた馬に乗って現れるとあるそうですが、あまり縁起がよくないので使えません。
さて、甲午年はどんな年になるか。
毎年、ネタ本としているのがこの本です。
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昭和38年の癸卯から昭和55年の庚申までの18年分しかないので、甲と午のところを拾い読みしてつなげれば、平成26年のおおよその流れが見えてきます。
まず、甲。
十干のトップバッターです。かつての日本では成績表にも使われました。全甲は、今でいうオールAの優等生。
安岡正篤によると甲は「草木の芽が殻を破って頭を出した象形文字」であり、「旧体制が破れて革新が始まる」という意味。
そして午は、陽の極地であるけれど「一陰が陽を冒して上昇する象」。正午は太陽が最も高い位置にありますが、正午を過ぎると太陽は沈んでいきます。
相場のことわざでも、「辰巳天井、午尻下がり」といいます。辰と巳は時刻では午前7時から11時の4時間。時間の十二支は2時間ずつ、24時間で一巡します。
辰と巳は、日の出から太陽がぐんぐん昇っていく勢いがあります。午は天井を打ったあとで、あとは下がるしかありません。安岡正篤は「反対勢力の高まりを示す」と書いています。
アベノミクスで景気がよくなったけれど、そろそろ頭打ち?
ただ、今回の午はかなりエネルギーがあります。
木火土金水の五行では甲は木で、午は火。木生火で、午は甲からエネルギーをもらい、ピークは過ぎつつあるといってもかなりの暴れ馬となりそうです。
前回の甲午年である1954(昭和29)年は、日本の高度経済成長が始まった年です。
1954年は戦後の復興期でもあり、国全体として経済成長へと向かえたわけですが、個人の才覚によって成長の波に乗れるか乗れないか、大きな差が生じたはずです。
2014年も、上手に暴れ馬を乗りこなしてスピーディに目的地に到着する人もいれば、落馬して大怪我をする人も出るでしょう。
格差が一層広がるという身も蓋もない予想になりましたが、甲午のエネルギーは制御がむずかしいのです。