星新一の「ナンバー・クラブ」を読んだのは、30年以上も前です。
酒場のテーブルに小さな装置があり、会員証を入れるとその場にいる客同士の共通の話題を教えてくれるという話です。
旅先でも初対面の相手と盛り上がれます。
これはまさに私がカウチサーフィンで楽しんでいることです。
ルイジアナ出身の青年医師、ケネスと我が家のリビングでザ・バンドの「ラストワルツ」を観るなんて一昔前には想像できませんでした。
日本旅行を計画していたケネスがカウチサーフィンの私のプロフィールをチェックして「好きな音楽/ボブ・ディラン、ザ・バンド」に目を留めてカウチリクエストを送ってきたからです。
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ドイツ出身でヘルシンキ在住のスザンヌも、私のフィンランド好きを知り、お土産にヨレ・マルヤランタのCDを持ってきてくれました。
「ナンバー・クラブ」では酒場の会話に限定されていましたが、カウチサーフィンでは、共通の話題に加えて、新しい体験もできます。
スザンヌをホストしなければ、空手道場なんて一生行かなかったでしょう。
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そしてケネスとは、カトリック教会に行きました。
「今度の日曜日は、パーム・サンデーという特別な日なんだ。近くにカトリックの教会はあるかな?」とケネスに聞かれました。
人種的にはフレンチ・アイリッシュだというケネスは、敬虔なカトリック信者のようです。
パーム・サンデー。
日本語では枝の主日(受難の主日)。
復活祭の1週間前の日曜日で、イエス・キリストがエルサレムに入城した記念の日だそうです。
ネットで調べると、我が家から徒歩20分ほどにカトリック教会があり、枝の主日のミサを執り行うようです。
住宅地の中なので、ケネスだけで行くのは大変なので一緒に行くことにしました。
私の実家は真言宗ですが、ミッション系の学校に通いましたし、フィンランド語講座のためにルーテル派の教会に通っています。
宗教的な節操がないので、カトリック教会のミサにも行ってみたかったのです。
途中、道に迷いそうになりましたが、うまいぐあいに教会の信者の方と会い、無事に到着。
シュロの葉と賛美歌集を渡され、教会の中に入ります。
私はすたすたと席に歩いていったのですが、ケネスはひざまずき、十字架を切りました。
前の晩はビールと日本酒を飲みながら「ラストワルツ」で大いに盛り上がったけれど、ケネスはやっぱり異国の人なんだとしみじみ感じました。
ミサは日本語で執り行われましたが、賛美歌や聖書の朗読などの進行は世界共通なので、内容はだいたいわかったというケネス。
「一つだけ、違うところがあったよ。共同祈願の後、アメリカでは信者同士で握手するんだけど、日本ではお辞儀するんだね」
国境を越えて共通の趣味の人と出会うだけでなく、新しい世界も体験。こんなおもしろいことが他にあるでしょうか?